ファンタジー化と並んで進んでいるキャラクター化。ハリウッドの登場人物がキャラクター化していった背景には、メディアの多様化によって、次表のように収益の多様化が進んだというビジネス的側面がある。
映画草創期には、収益を得る方法は興行しかなかった。その次に生まれたのが、1920年代から始まったCARTOON(マンガ映画)の商品化。世界初のサウンドトラック『白雪姫』(1937年)も含まれるが、当時は少数派だった。そして、1950年代からテレビの時代が始まり、アニメーションの放映権をテレビ局に販売するという収益手法が生まれた。
そして1980年代に、ビデオという収益手法が誕生。当初、ハリウッドの映画会社が著作権侵害でソニーを訴えるといった事態もあったが、やがて映画興行を超える収益手法に育っていく。また、時を同じくして、CATVや衛星放送など多チャンネル化が進み、地上波とは違った収益システムが生まれたのである。
2000年代に入ると、これらにインターネットが加わる。さらに最近ではコンサートやミュージカルといったライブエンタテインメントも有力な収益手法として改めて見直されている。ディズニーだとアイスショーの「ディズニー・オン・アイス」、クラシックコンサートの「ディズニー・オン・クラシック」、ミュージカルの「ライオンキング」などだが、こうした収益手法のサイクルが完結するのはディズニーランドのようなアトラクションだろう。
このように収益手法が多様化する中、興行の割合は低下。『ビッグ・ピクチャー』によると、ハリウッド映画でも全体の収入の14%に過ぎなくなっているという。
従って、製作サイドが映画興行だけでなく、全体として収益を最大化できる作品を考えるのは自然の成り行きで、そこで出てくるのがキャラクター志向というわけである。グッズやアトラクションのテーマとなるようなものに目が向くのは当然である。
次表の1965年北米映画興行収入ベスト10を見ると、キャラクター展開できそうなのは007くらい。『サウンド・オブ・ミュージック』はミュージカルになりそうだが、これはミュージカルだったものを映画化したものである。
このように興行が収益のメインだったころは、観客の満足度を高めるためにキャラクターよりスター、あるいはストーリーが重視されたのである。
一方、先ほど示した2010年北米興行ベスト10のキャラクター志向を見ると、『ハンガー・ゲーム』以外は非常に高い。映画を見なくても、ロゴマークも含めたキャラクターグッズを買う可能性がある作品ばかりである。
そして、キャラクター志向の作品は映画興行やビデオ販売が終わった後でも、グッズやアトラクション化などで収益をもたらしてくれる可能性がある。映画のビジネスモデルが多メディア化したことで、キャラクターのスター化が起こっており、今ではスパイダーマンやバットマンを誰が演じるかさえ気にされなくなりつつある。
合わせて、続編化される割合も高まっている。一度キャラクターが認知されれば、ある意味、続編も“キャラクター商品”となる。キャラクター志向の作品をシリーズ化し、人気が衰えるといったん停止、そして数年〜十数年後にリブートさせるのが、現在のハリウッド映画のトレンドとなっているのだ。
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