なぜ鉄道映画が注目されているのか――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(前編)杉山淳一の時事日想(4/9 ページ)

» 2012年10月19日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

出張は直線区間、旅は曲線区間で撮る

杉山:鉄道ファンが映画やドラマで列車を見ると、「あの作品を作った人たちは鉄道を理解しているな」「こっちはいい加減だな」なんて思います。鉄道がテーマの映画ではなくても、地域や時代の移り変わりを鉄道車両で表している場面があると嬉しい。映画製作者にとって、映像に鉄道を取り入れる時、その効果を考えますか。

竹山:やっぱり、動くものを撮りたがるんですよ。クルマなり鉄道なりね。例えばこの喫茶店でもね、真正面から撮るよりは、ちょっと斜めにして、通り過ぎるクルマを入れる。そうすると画面に動きが出るし、活気のある街なんだ、という表現にもつながっていきます。

杉山:背景の1つとして鉄道は効果的ですか。

竹山:五能線あたりの海の景色はキレイですよね。でも、海岸だけじゃなくて、列車が走っている場面の方がいいんです。線路も直線よりは曲がっている方がいいとか。

杉山:ただ列車が走っているだけでなくて、生活感がほしかったら通勤電車、旅をイメージする場面だったら特急列車、という演出もできますね。

竹山:489系がカーブを走ってくる場面。そういう撮り方が好きなんですよ。

杉山:まっすぐ走っていく映像だと急ぐイメージがあって、カーブをゆったり曲がっていくと、楽しさが加わっているような気がします。本作では、前川清さん演じる主人公は出張ではなく、旅をしているんですものね。

竹山:そう。旅なんです。

杉山:急いで行きたいではなく、楽しく行きたい。その気持ちの表現方法の1つがカーブですね。

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