なぜ鉄道映画が注目されているのか――『旅の贈りもの』制作者インタビュー(前編)杉山淳一の時事日想(5/9 ページ)

» 2012年10月19日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

古い車両に「想い」を乗せて

竹山:2009年に『銀色の雨』という映画を作ったんです。浅田次郎さん原作で、大阪から米子へ行く話です。これは鉄道がメインじゃないんですが、これに中村獅童さんが寝台特急出雲に乗って米子に行くという場面があるんです。中村さんの役はボクサー。田舎を捨てた男が母親の病気を聞いて、引退するか否かを悩みつつ、米子に戻る。これ、飛行機でぴゅっと帰っちゃダメなんです。道中で思い悩む顔や、母親の手紙を読みなおしたり、それを寝台特急のベッドの上で。

杉山:旅情とか心情とか、ゆっくり動く乗り物だから描ける部分がある。飛行機じゃダメなんですね。夜行バスでは本を読んだりできませんし。

竹山:この時も、寝台特急の車両をJR西日本さんが出してくれたんです。だから、列車が出てくる作品を作る時は、まずJR西日本さんと相談します。JR西日本さんからも提案をいただくんです。

杉山:沖縄にもモノレールができたし、ほとんどの日本人の暮らしにとって、鉄道は切っても切れない存在ですよね。むしろ、鉄道の出ない映像作品は不自然です。『北の国から』だって、北海道の田舎の話ですけど、都会との出入口、という意味合いで駅や列車が出てきます。

竹山:そうです。でも、JR西日本ほど理解のある会社はまだ少ないですね。『銀色の雨』は、『水曜どうでしょう』の鈴井貴之さんが監督だったんですけど、JR西日本の対応の良さに感動していました。

杉山:鉄道会社によって温度差があるんですか。

竹山:ロケは絶対ダメ、というところ、ロケをしてもいいけど、区間や列車限定というところ。映画制作を理解してくれない会社もあります。だから『旅の贈りもの』の前作と本作では、鉄道会社さんを試写会に招待しています。

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