“目標疲れ”時代に、結果とプロセスの関係をどう考えるべきか(1/4 ページ)

» 2012年07月10日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 私が行っている企業内研修のサービスの中で、「キャリアMQ」という診断ツールがあります。これは個々の従業員の働くマインドや価値観がどんな傾向性を帯びているかを、65の設問に答える形で判定するものです。そこに次のような問いがあります。AとBについて、あなたはどちらの考え方に近いでしょうか?

 A「多少の無理や違和感があっても、組織と合意して決めた業務目標をクリアするところに働き手の成長がある」

 B「仕事はやりがいや納得感を最優先に設計されれば、結果は後から付いてくるものだ。無理な目標設定はかえって働き手のモチベーションを下げてしまう」

 Aは「形ある成果を出すこと」を上位に考え(=結果重視)、Bは「きちんとプロセス(過程)を整えること」を上位に考えるもの(=プロセス重視)と言えます。

 例えば、あなたが今、いつも厳しい数値目標達成に走らされている部下であれば、「私は断然、Bです」と答えるでしょう。しかし、もし自分が経営危機に陥っているベンチャー企業の社長だったらどうでしょう。その時、「私はBです」だなんて悠長なことを言っていられるでしょうか。

 で、実際のところ、このAとBの回答割合はどうなっているのか。私の顧客企業からデータを取って算出してみました(拙著『プロセスにこそ価値がある』メディアファクトリー新書より)。

 図にまとめた通り、一般社員では人数の上でほぼ7割(68%)が「プロセス重視」です。中間管理職はどうでしょう。状況は逆転して「結果重視」(52%)に振れています。これは経営側に寄っていけばいくほど、「結果=利益」を出さなければ、会社が回っていかないことへの責任意識が強くなるためでしょう。あるいは、「若い者をヘタに甘やかしてはだめだ」「試練をもって成長させなければならない」といった年配者独自の考え方があるのかもしれません。

 しかし、ここで注目すべきは、結果重視とはいえ、中間管理職のなかで「プロセス重視」とする人数の割合も48%であり、半数に近いということです。これは恐らく、彼らもまた組織のなかでは上司を持つ身であり、「結果を出せ」のプレッシャー下にある身だからかもしれません。

 「結果とプロセスのどちらが大事か?」───はとても悩ましげな問題です。「結果もプロセスもどちらも大事」と言ってしまうことは簡単ですが、それだけで済ませてしまうと思考や意識が発展していきません。このテーマを深く考えることは結局、「働くとは何か?」「仕事の幸福とは何か?」につながっていくからです。

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