“目標疲れ”時代に、結果とプロセスの関係をどう考えるべきか(2/4 ページ)

» 2012年07月10日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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「しんどくてツライ」か、「しんどいけど楽しい」か

 私は企業の現場で「仕事とは何か?」「よりよいキャリア(職業人生)とは何か?」「プロフェッショナルとは何か?」といったテーマの研修を実施しています。そうした教育プログラムを開発するにあたって、顧客企業の人事担当者といろいろと討議をするのですが、その時に必ず出てくる職場問題の1つが──「みんな『目標疲れ』している」ということです。

 「目標疲れ」とは毎期毎期、個人に課される数値目標、担当部署が掲げる数値目標を達成せよというプレッシャーに疲れることです。確かに、目標通りに結果が出れば、達成感があってうれしいですし、その努力は給料にも反映されることでしょう。ですが、昨今の経済は必ずしも右肩上がりではなくなり、単純に前年比○%増という目標を立てて結果を出すことが難しくなっています。加えて、多くの会社が成果主義制度の導入に踏み切ったことで、「結果を出さなければ」の精神的負荷はますますひとりひとりの社員に増しています。

 私もサラリーマン時代の経験で知っていますが、思う通りの結果が出ない時は気分が落ち着かないものです。胃も痛くなるし、頭もさえない。上司との会話もぎこちなくなるし、自分が何かフワフワと漂流している感じで、「このままの状態でいいのかな」と不安にもなります。ましてや年次が上がってきてチームリーダーや管理職ともなれば、今度は自分が目標を部下に課さなければならなくなります。サザエさん症候群ではありませんが、日曜の夕食時、テレビからあの番組のテーマ曲が流れてくると、気分が重くなったものです。

 次の図を見てください。Aさん、Bさん、2人の働きざまを表しました。

 Aさんの状態は逆台形です。とても不安定で、いまにも倒れそうな感じです。なぜなら、目標が重くのしかかっていて、自分の能力と時間をどう使うかというプロセスが小さくしぼんでいるからです。こういうあっぷあっぷの状態で何とか日々の仕事をやりきっている人が、実は日本の職場に増えています。仕事が「しんどくてツライ」という心理モードです。

 他方、Bさんはとてもどっしりとした形になっています。言ってみれば「富士山の上に太陽が輝いている」感じです。プロセスが力強く土台を作り、そこから目標へとつながっています。そして目標の先に目的があります。「目標」と「目的」という言葉は混同して使われがちですが、目標とは単に成すべき数量や状態を言い、目的はそこに「〜のために」という意味が加わったものです。

 Bさんの図で注目すべき点は、上で輝いている目的がモチベーション・やる気を起こし、プロセスを刺激していることです。

 人間は意味から力を湧かせる動物です。ですから、結果を出すことのプレッシャーが多少あったとしても、自分のやることに意味を見出していれば忍耐力と継続力をもって頑張ることができます。その力はプロセスを育みます。そして最終的に結果につながっていくわけです。すると、また次の目標に向かっていける。「しんどいけど楽しい。もっと挑戦してみよう!」という気持ちになれるのはこうしたメカニズムによるものです。

 Aさんはいわば「目標に働かされる働きざま」で、Bさんは、「自らの目的に生きる働きざま」と言ってもいいかもしれません。

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