「鉄道ファン=良い客じゃない」――この構図にしたのは、誰かどうなる? 鉄道の未来(3)(1/6 ページ)

» 2012年05月21日 08時05分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

どうなる? 鉄道の未来

 鉄道の未来は? と聞かれれば、答えは「厳しい」と言わざるを得ない。人口減で需要が減少するなか、台頭する格安航空会社(LCC)と整備されていく高速道路網と戦っていかなければいけないからだ。

 もちろん鉄道が急速に衰退するとは思えない。むしろ首都圏では次々に新線が開業し、既存路線が整備されていっている。「過当競争に陥っているのではないか」という懸念が広がるなか、地方鉄道は赤字に苦しみ、廃止・縮小を余儀なくされている。

 こうした現状に対し、鉄道会社は次の一手をどのように打てばいいのだろうか。そこで鉄道事情に詳しい共同通信の大塚圭一郎記者とBusiness Media 誠で連載をしている杉山淳一氏に、徹底的に語り合ってもらった。対談は全7回でお送りする。


残念な反論

杉山:私はBusiness Media 誠の時事日想というコラムで「鉄道ファンって、鉄道会社にとってお客じゃないよね」といった内容のことを書きました。かなりあちこちで盛り上がったのですが、鉄道ファンの人たちは反発していました。「オレたちは客じゃねえのかっ」と。もちろん「客じゃない」とは言いませんが、良い客かどうかといえば「良い客ではない」。なぜならその人たちが使うお金は、鉄道会社にあまり回らないから。

 鉄道会社にとってお客というのは、自社にお金を落としてくれる人のこと。でも“撮り鉄”の人たちはカメラを買いますが、それはカメラ会社にとっての客であって、鉄道会社の客ではない。

 私は鉄道ファンを責めているのではなく、そういう趣味の世界もあるよ、という話をしました。例えば天文分野であれば、望遠鏡にお金を払う人はいますが、月にお金は払いません。趣味の世界というのは、それでいいんですよ。だから鉄道ファンが悪いとは言っていません。

大塚:なるほど。

杉山:趣味が映画を観ることであれば、映画館に足を運んだり、DVDなどを購入したりするので、基本的に映画関係者にお金が落ちていきます。お金の流れをみると、送り手側と受け手側の間でイーブンな関係を築くことができますよね。

 天文を趣味にしていても、月や星は怒りません。もちろん太陽も。太陽は「お金を払わなければ光を出してやんねーよ」などと言いません。

 でも鉄道の場合は違う。鉄道会社にとって大切なのは、乗り降りしてくれるお客さん。まずはその人たちへのサービスが第一……といった話を書いたのですが、鉄道ファンからは反発されてしまった。

阿佐海岸鉄道の車両ASA-100形(撮影:杉山淳一)
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