「鉄道ファン=良い客じゃない」――この構図にしたのは、誰かどうなる? 鉄道の未来(3)(5/6 ページ)

» 2012年05月21日 08時05分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

ちょっとした工夫で、客はお金を落とす

大塚:いすみ鉄道(上総中野〜大原間)の鳥塚亮社長をインタビューしたことがあるのですが、取材後に売店に連れていかれました。鳥塚社長は売店の女性に「この人、1万円分を買うからいろいろ品定めさせてあげて」と言うんです。で、売店の商品を見ると、どれもこれも高いんですよ(笑)。レトルトパックのカレーはスーパーで100〜200円くらいで売ってますよね。でも売店では1000円もするんですよ。

杉山:あれはカレーマニアが買ってもいいくらい、おいしかったですね。しかもサイズが大きくて、2人前くらいある。

大塚:確かにおいしかったですね。

 カレー以外にも最中10個入りで1500円、ムーミンのキーホルダーが840円……総じて高い。でも、売店で買ってしまうんですよ。そして売店の女性がこう言ってくれました。「お客さま、すばらしい。1万円に到達しましたよ」と。

 そして列車に乗って出発するときには、その女性が手を振ってくれたので、VIP気分を味わうことができました(笑)。

 このようにちょっとした工夫で、客はお金を落とすはず。しかし多くの鉄道会社は、提案の仕方がへたなんですよね。

杉山:いすみ鉄道といえば、「ホタルウォッチングトレイン」に乗ったことがあります。地元のゲンジボタルをたくさん見ることができるので、いい企画だと思うのですが、どう考えてもそれだけでもうけている感じがしない。

 ホタル列車の許可証は1人500円。ディーゼルカー仕立てというのはいいのですが、降りたあとにはバス3台くらいをチャーターして、移動する。現地へ行くまでに警備員がたくさんいるんですよね。この人たちの日当はいくらなんだろう? 例えば8000円としたら、1人500円では赤字だろうな、と。

大塚:いすみ鉄道の株主に小湊鉄道が入っているので、もしかしたらグループで融通しているかもしれません。また警備員は地元のボランティアっぽい人もいたので、観光客獲得のために地域で連携しているのでしょう。

 ご指摘のとおり、ホタル列車でもうけてはいないと思いますが、会社からすればリピーター獲得を狙っているのかもしれません。

杉山:あと、お客は売店に行くんですよ(笑)。

大塚:そうなんですよ(笑)。

 ですが車内販売はしていませんでした。そこは機会損失をしていますよね。でも、いすみ鉄道は商魂たくましいので、今年はしっかりと売り歩くかもしれません(笑)。

杉山:車内が混んでいるので、売りにくいのかもしれませんね。

いすみ鉄道で活躍しているキハ52形(撮影:杉山淳一)

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