「ニーズは発明の後に生まれる」――ロボットクリエイター高橋智隆が語るモノづくりの新機軸New Order ポスト・ジョブズ時代の新ルール(4/4 ページ)

» 2012年04月12日 08時00分 公開
[取材・文/瀬戸友子 撮影/竹井俊晴,エンジニアtype]
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「発明は必要の母」である時代がやってきた

高橋 だからこそこれからは、「今誰も欲していないもの」を作らなくてはなりません。

 それは、マーケットリサーチで分かるものではない。ならば、個人が面白いと思ったものを作れば良いというのが私の意見です。むしろ、そうしなければ新しいものを生み出せない時代になってきている。

 シリコンバレーのベンチャー企業を見てもそうでしょう。スタンフォードとかMITとかの学生が考案した珍発明を公開したら、みんなが面白いとネットで話題を集め、ならばと誰かが出資してくれてベンチャー企業が生まれる。でも、何の役に立つのか、どうやってもうかるのか何も分かっていないまま。しかし、それが普及していく中でユーザーによってその用途が生み出されたり、ビジネスのチャンスが見えてきたりする。

 FacebookもYoutubeもみんなそんな風に生まれてきた。それが今の新しい産業の生まれ方。今までは「必要は発明の母」だったかもしれない。でもこれからは「発明は必要の母」なんです。

 確かに、ハードウエア製品はソフトウエアと違って生産や流通のコストがかかる分、難しさがあります。でも、経済が成熟して、消費者の文化的なセンスが高まってくると、コンセプトのぼやけた製品は受け入れてもらない。消費者はもっととんがったものを求めているのです。

 その答えも、1つではない。今のように雑多なデザインの製品が多い中では、iPhoneのシンプルさは非常に際立つけれど、みんながこれを持つようになると、より装飾的なデザインが好まれるようになるかもしれません。

 世の中に出回っているパッとしないデザインの製品も、おそらく最初にデザイナーが描いたスケッチはもっと格好良かったはずです。それがモックアップ、試作、量産品と段階を経るごとに、どんどん無難で実用的なデザインに変えられていく。実現不可能なデザインを考えたデザイナーと、デザイン上重要な部分を技術的な都合で勝手に変えてしまうエンジニアの合作は、恐ろしく不格好で、ろくに機能しない最低な製品を生み出すのです。

 だから、エンジニアはデザインのセンスを磨き、デザイナーは工学的な基本を理解してほしいですね。

 エンジニアにせよ、デザイナーにせよ、一流の条件というのは、自分の意見をうまく通せることだと僕は思います。それによって素晴らしいものができれば、その人の評価が上がり、発言力もさらに高まり、次の良い仕事へとつながっていく。変に妥協することで、結果醜悪な製品がアウトプットされ、その評価によって次回の仕事でさらに悪い結果を招くのです。

 大切なものを守るには、周囲を納得させる力が必要であり、強引すぎて衝突は招いたかもしれないが、ジョブズにはそれがあった。それぞれの力がギリギリの緊張感の中で融合していれば、崇高な製品が生まれるのです。

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