コラム
» 2012年01月10日 08時00分 UPDATE

松田雅央の時事日想:なぜドイツは製造業が強いのか――歴史を振り返る (1/4)

EUはユーロ危機に大きく揺れているが、そんな状況でも2011年ドイツの経済成長率は3%近くに達した。今回の時事日想は「ドイツ博物館」を紹介しながら、ドイツ経済の強さの秘密に迫ってみた。

[松田雅央,Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 EU(ヨーロッパ連合)はギリシャやイタリアなどの財政危機を発端とするユーロ危機に大きく揺れている。しかし、そんな状況でも2011年ドイツの経済成長率は2.9%に達し、特に基幹産業である機械、自動車、電子が好調だ。

 ドイツ製造業の強さの秘密を探ると、浮かび上がるのはものづくりを大切にする伝統とイノベーションにかける情熱だ。今回はドイツの産業振興と深い関わりを持つ、世界随一の技術・科学博物館「ドイツ博物館(ミュンヘン)」を紹介したい。

本物の迫力

 ドイツ博物館の入場口を抜けると、第一の展示ホール「海洋航行」を一望できる。体育館ほどの吹き抜けホールには多数の船が置かれ、中でも真ん中の中型帆船エバー号が目を引く。

 1900年建造のエバー号はドイツ・エルベ川河口で使われていた漁船で、このタイプは計1100艇が建造された。魚網を引くために十分な広さの帆があり、水深の浅い水域でも航行可能な船が必要とされ、そのために開発されたタイプだった。

 ドイツ博物館は可能な限り実物の展示を基本としている。さすがに大型船舶は模型の展示となるが、現在も潜水艦を建造するドイツKrupp社による世界初の近代潜水艦「U-1」は実物だ。1906年当時すでに潜水艦は実用化されていたが、実戦に耐えうる潜水艦はまだなく、そのための実験艇がこのU-1である。

 全長42.4メートル、排水量283トン、最大潜航深度30メートル、乗員12名、魚雷発射管1本、魚雷3本を積むことができる。円筒耐圧構造を持ち、水上はガソリンエンジンで航行し、最大航行距離は約1600キロメートル、蓄電池とモーターを備え、最長6時間潜航できる。

 第一次世界大戦時、世界に先駆けて潜水艦隊を実戦投入したのがドイツだった。大戦が終わり、生き残った潜水艦は破棄されたが、練習船として使われていたこのU-1は運良く廃棄を免れ保存されることとなった。

yd_matuda1.jpgyd_matuda2.jpg 展示ホール「船舶航行」。1900年建造の漁船エバー号(左)、1906年建造の潜水艦U-1(右)

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