ちょ、ちょっと怖いよ……海外で行っている「聖ニコラウスの日」松田雅央の時事日想(3/4 ページ)

» 2011年12月24日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

こんな時代も

 最後に、70台半ばの知人(ドイツ人女性)が書いてくれた聖ニコラウスの思い出を紹介したい。

 2〜5歳の頃、12月4日の夜、ニコラウスがやって来ました。私たちが住んでいたのは(ドイツ西部の)ザールラント地方です。それは第二次世界大戦中、たぶん1943年だったと思います。

 子供たちにとってはとても大きなイベントです。この時期になると子供たちは急に行儀良くなります。悪い子にしていると、ニコラウスと一緒にクネヒト・ループレヒトが来て、連れ去られてしまうからです。

 ニコラウスの夜になり、私と兄弟、近所の2人の子供は台所の調理用ストーブの前におばあちゃんと座りました。おばあちゃんは、子供たちをなだめようとお話してくれます。

 すると下階から変な音が聞こえてきました。誰かが杖でドアを叩き、鍵のかかっていないドアを開け、ドタドタと階段を上がってきます。そこで私たちは歌を歌い始めました。

 「ニコラウスは、想像できないくらい、いい人。楽しい、楽しい、ドゥラララー。ニコラウスの夜がやってきた! ニコラウスの夜がやってきた!」

 歌っている私たちは、その後自分の身に何が起こるか分からないのですから、本当は全然楽しくありません。ニコラウスは大きな本を開けて、私が幼稚園に行きたがらないのは困ったことだ、と言いました。私は幼稚園にちゃんと通うことを約束し、それから小さなプレゼントをもらうことができました。戦時中ですから、プレゼントは小さなものです。でも、それは問題ではありません。クネヒト・ループレヒトの袋に詰められ、連れて行かれないことが一番大切だったのです。

 クネヒト・ループレヒトはボロボロの服を着て、頭巾を深くかぶっていました。背を丸めた小さな男で、持っている棒で子供を叩くこともあります。それに比べて赤と白の司教の服を着て白いひげを生やしたニコラウスは、とても穏やかな顔をしていました。

 ニコラウスは私たちの歌を褒め、小さなプレゼントをくれました。でも、隣に住むエリックは袋に入れられ連れ去られてしまいました! 彼は暴れてクネヒト・ループレヒトの足を思いっきり蹴りましたが効果はありません。エリックは階段の下に連れて行かれましたが、私にはどうすることもできません。

 でも彼はすぐ、大泣きしながら帰ってきました。17歳の姉フリートヒェンと一緒に。でも2人はどこから来たのでしょう? ニコラウスが来たとき、フリートヒェンがいなかったのはなぜ? 3歳年上の兄が、そっと耳打ちしました。「フリートヒェンがニコラウスだったんだよ……」。マチルデ・ミュラー

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