同じ部署にいる、当時30歳の女性が会社のWebサイトの編集を担当していた。その仕事に限って言えばよくできていた。しかし、それ以外の仕事はいろいろな理由をつけてしない。結婚したばかりということもあってか、午後5時になると、帰りたくて仕方がないという感じだった。
上司(40代後半、男性)は不満を持ちながらも、遠慮して叱らない。結局、部内で唯一の男だった私のところに彼女の仕事が流れてくる。残業は増えてその分の多くが、サービス残業になった。だが、女性は悪びれた様子がない。むしろ、上司の批判までしていた。
私は、この頃に考えを変えた。会社員は組織の一員である以上、仕事ができたとしても、チームとして働くという自覚を忘れてはいけない。このことは多くの人が理解しているが、いざとなると難しい。この女性も分かっていたのだろうが、行動に移すことができなかった。
「会社という組織である以上、こういう女性を高く評価してはいけない」というのが私の考えだ。言い方を換えると、職務遂行能力だけで社員を判断すると、組織が成立しない。冒頭で述べたコンサルタントと私の考え方の違いは、おそらくこのような経験もあり、生じているのではないかと思う。
日本企業の多くは人事評価をする際、少なくとも2つの基準をもとに評価する。1つは職務遂行能力やそれにともなう実績、業績など。もう1つは行動評価と呼ばれるもの。会社により、その名は「コンピテンシー評価」とか「プロセス評価」などと呼ぶところもある。例えば、協調性、積極性、行動力、規律、リーダーシップなどだ。
2つの基準の比率であるが、非管理職の場合、職務遂行能力やそれにともなう実績、業績はせいぜい4割だ。残りの6割は行動評価である。中堅・大企業の非管理職になると、行動評価の比率が一段と高くなる傾向がある。私が知る大手ビールメーカーでは、7割が行動評価だ。
「成果主義」と聞くと、職務遂行能力やそれにともなう実績、業績ですべてを判断するように思われるが、そのウェートはあまり高くない。冒頭で述べたコンサルタントに限らない。他のコンサルタントや経営学者を取材してもと、「成果主義は社員の実績だけで判断する」と思い込んでいる人がいる。これは、認識として誤りだ。
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