会社員にとって、“実力”とは何か吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

» 2011年12月02日 07時59分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 前回の記事で、知人のコンサルタントの考え方と私の考え方の違いについて説明をした。その後、インターネットを検索していると、ブログやTwitterにこの記事についての意見が書かれてあった。印象に残ったのが、次のものだ。

 「コンサルタントと筆者(私)の違いは、実力主義のとらえ方が違うから生じるのではないか」。

 これらを書いた人と面識はないが、私は言わんとしていることが分かる気がした。つまり、コンサルタントの実力とは職務遂行能力のみを意味するのに対し、私のそれは職務遂行能力だけでなく、上司や周囲からも理解をされ、そのうえで高い成績を残すことを意味する。

 これらは、会社員をしていくならば考えておきたいことだ。そこで今回は、会社員にとっての実力を考えてみたい。

会社員にとっての実力とは

 まず、1つの例を紹介しよう。これは、5年ほど前の取引先(社員数約300人の広告代理店)で、40代後半の人事担当役員が語っていたことだ。

 「営業部員が80人ほどで、そこで契約高が上位5番以内に常に入る部員がいる。その意味では優秀であり、実力がある。だが、積極性や協調性、チームワーク力など別の観点から評価をすると、実力があるとは言い切れない人がいる」

 このような認識の会社は多いだろうか、少ないだろうか。残念ながら「会社員にとって、実力とはどういったものか」というテーマで意識調査をしたものが見当たらない。したがってこれまでの20年ほどの取材の実感値で言うと、「彼は営業成績がいいから、実力がある。だから上にあげようと」と単純に評価する会社は少ない。

 その象徴として、取引先や取材先で営業部長や担当役員などの過去の実績を聞くと、営業成績ナンバー1の人が自動的に昇格はしていない。部内で上位の成績で、社長や役員などから信任が厚く、部下からも取引先からもある程度、認められている人がなっているケースが多い。

 ここまでの話を読むと、「人事はフェアではない」と思う人がいるかもしれない。私も30歳くらいまでは、そのような考えだった。しかし私が35〜38歳のときに考えを改めるようになった。ある出来事を経験したからだ。

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