福島第1原発事故による放射性物質の汚染が、各地で広がりを見せている。人体への影響を食い止めようと、庭の表土をはぎ取ったり、高圧洗浄機を使って屋根や壁などを除染する動きが出ている。
首都圏でも高い放射線量を示す「ホットスポット」と呼ばれる地域がある。できるだけ早く放射性物質を取り除いてもらいたいが、重い腰をなかなか上げようとしない国や行政サイド。そんな動きを見て、「自分たちで除染をしよう」という人も多い。
土の表土をはぎとったり、水を流せば線量の数値が下がる、ということはなんとなく知っている。しかしどのような手順で作業を進めていけばいいのだろうか。
事故後、福島県南相馬市で除染活動を続けている坪倉正治医師(東京大医科学研究所)。現場の除染活動とはどんなものなのか、またどんな問題が生じているのか。坪倉氏の活動を紹介しよう。
――除染活動はどのような形で行われていますか?
坪倉氏:放射性物質は空から飛んできて、あちこちの場所に沈着する。土の上についたり、屋根の上についたり、アスファルトに入り込んだり。草木の線量が高いので切った場合、どうなるか? 私の経験上で言わせてもらうと、草木についている放射線量はそれほど高くない。
草木を刈り取ると、線量が上がるケースが多い。なぜかというと、放射線量は草木についているのではなく、草木の下にある土についているからだ。なので草木と一緒に土をはぎとれば、線量はかなり下がる。草木は、土についている放射線量をブロックしているのかもしれない。
なので今の除染活動は草木についている放射性物質を取り除くためにやっているのではなく、草木の下にある土をはぎとる作業が中心だ。
除染活動は「土をはぐ」「草木を抜く」「水で洗う」――基本的にこの3つしかない。なんらかの薬剤など、このほかにも方法はあるのだろうが、南相馬市で行っているのはこの3つだけ。要するに「鋤(スキ)、鍬(クワ)、水」があればいいのだ。もちろん大規模に除染するのであればショベルカーなどが必要になるが、市民レベルであれば“近代兵器”は必要ない、と言ってもいいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング