除染活動、現場ではナニが起きているのか(4/5 ページ)

» 2011年10月26日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

保育園を除染

――公共施設も除染されているそうですが

坪倉氏:保育園の除染を行った。その保育園の敷地は20メートル×15メートルくらいだったが、線量を計測したのは800カ所ほど。よく「10カ所くらいでいいんじゃないですか?」と聞かれる。しかしありとあらゆる場所を計測しないと、除染の効果が分からない。なので除染を行う前に、線量の計測は徹底的に行うのだ。

 除染活動を行うにあたって、園児が主に活動する室内の線量を下げることを目標にした。地域全体の線量を下げようといった大きなものではなく、園児が活動する場所の線量をいかに下げていくか。これを考えながら除染をしていかないと、活動がなかなか進まない。

 園庭の土はどこまではぎとればいいのか。「5センチ、いや10センチ」といった議論があるが、あまり意味のないことだと思う。線量の数値は掘れば掘るほど下がる。何センチはぎとるかという議論よりも、まずは「線量をどこまで下げたいのか」という話から始めなければいけない。目標とする数値を決めてから、どこまではぎとるかを決めなければいかない。

 また土も種類によって、線量が大きく違ってくる。砂場については、放射線物質がものすごく浸透するので、深くまで掘って、土をはぎとらないと線量は下がらない。一方、粘土質の土であれば薄くはぎとるだけで、線量は下がる。

 土を掘ったあとはどうしても表面が凸凹になってしまう。表面が凸凹になれば、そこが新しい放射性物質の溜まり場所になってしまう。そうすると、私たちは再び、計測を始めなければいけないのだ。

 さらに、はぎとった土をどこに持っていけばいいのかという問題がある。保育園のケースでいえば、園長が近くの駐車場を借りて、そこに土を埋めた。その横にはアパートが建っている。園長はそのアパートに住んでいる住民1人1人に頭を下げて回った。「園児のために、駐車場に土を埋めさせてください」と。

 現時点では、放射性物質を含んだ汚泥などを管理する中間貯蔵施設をどこに置くかは決まっていない。なので除染活動の現場では、保育園のような試行錯誤が続いているのだ。

保育園では800カ所で線量を測定した

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