もしもベルリンに原爆が落ちていたら――知られざる地下シェルターを見学松田雅央の時事日想(3/3 ページ)

» 2011年10月11日 12時38分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]
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 食料はすべて長期保存のきく缶詰類でベビーフードも用意され、収容者にはプラスチック製の食器、石けん1個、タオル1枚などが与えられた。非常時にたまたまここへ入れれば幸運だが、3000人がすし詰めの4段ベッドで2週間過ごすのはやはり過酷だったはず。特に空調には制限があり、高湿度による肺疾患が発生するとあらかじめ予想されていた。

 NPOベルリン・地下世界のシェルターツアーには世界各地の観光客が参加している。ほとんどが自分の生活とは関連のない歴史を見る感覚で、筆者も以前ならそうだったはずだが、日本が福島第1原発事故を経験した今はとても他人事に思えない。戦争と事故をごったにするつもりはないが、放射能汚染を伴う非常事態に市民が巻き込まれ、決定的に情報が不足する中で緊急の決断を迫られる状況は共通している。

 ドイツにとって切羽詰った戦争の危機はなくなったが、原発事故を含めた緊急事態には常に対策を講じておかなければならない。「もしかしたら起きるかもしれない危機」の可能性は、人が漠然と思うほど小さくない。

医療区画(左)、居住スペース(右、出典:いずれもBerliner Unterwelten e.V.)

通りの下に地下鉄駅・シェルターが広がる。手前のコンクリート板は非常用出口、前方には吸気口が見える

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