「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」の銚子電鉄は今どうなっているのか?嶋田淑之の「リーダーは眠らない」(4/6 ページ)

» 2011年10月07日 08時00分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]

「実は何もしていないんです(笑)」

 銚子電鉄の内山前社長の業務上横領による逮捕とその後の経営難については、すでに触れたが、『現代用語の基礎知識2008』に収録されるなど流行語にもなった「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」という悲痛な叫び以降の社内状況については、社外の人間には不明確な点がとても多い。

 一般的には、2006年11月以降の同社の戦略に関し、インターネットを有効活用して経営危機を乗り切った先進的なマーケティング事例として紹介されることが多い。特に2ちゃんねらーとのコミュニケーションが高く評価されているようだ。

 実際、銚子電鉄として、あるいは社長の小川さんとして、インターネットの活用について、どのような戦略を構築し、推進したのだろうか?

 「いやいや、実は何もしていないんですよ(笑)。インターネットで話題になってブームのようになったのは、あくまでも自然発生的なことです。私として、それを意図的に仕掛けたということはまったくありませんし、その後についても、それは同様です」と、意外なことをこともなげに言う。

「意図的にブームは仕掛けていない」と言う小川社長

 しかし、よくよく考えてみれば、確かに小川さんの言う通りなのかもしれない。自社の公式Webサイト上に「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。」という前代未聞のフレーズを載せたら、どれほどの反響があるかとか、ぬれ煎餅がどれだけ売れるかという効果を予測した上で、このフレーズを掲載したと見なすのには、やはり無理がある。

 むしろ、お堅い企業イメージがつきまといがちな電鉄会社でありながら、赤裸々に窮状を訴え、なりふり構わず全国の一般生活者に支援を求めるという、その率直極まりない姿勢が、結果的に多くの人の共感を呼ぶことになったというのが真相に近いのであろう。

 「銚子電鉄サポーターズという支援団体の設立・運営についても同様で、私は関与していません。あれは、一部の弊社関係者が私には一切知らせずに密かに組織したものです。テレビ局の女子アナなども呼んだ華々しい発会式をやる前日になって、ある社員が『社長、大変なことになっています!』と知らせてくれて初めて、私はその存在を知ったというのが真相です。

 なぜ社長である私に内密で組織化したのかと言えば、それは経営方針に異を唱えるある社員が、外部の知己を集めてサポーターズの中に紛れ込ませ、私を追い落とすクーデターを計画していたからです。

 銚子電鉄サポーターズに参加してくださった大多数のみなさまは、本当に銚子電鉄の将来の発展を願い、心から応援してくださる方々であると確信しています。

 しかし、今申し上げた設立経緯ゆえに、このありがたいご支援をくださったみなさまの名簿もご寄付の金額も、私は一切教えてもらえていないのが現状です。

 私としては、社会の常識として、当然の礼儀として、そのお礼を申し上げなければなりません。さらには時候のあいさつとか、銚子電鉄行事のお知らせとかを実施すべきと痛感しているのですが、そうしたことが一切できない状態で、本当に申しわけなく思っております。サポーターズに入会登録をされたみなさま、今後もよろしくお願い申し上げます」

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