コラム
» 2011年09月07日 08時00分 UPDATE

アップルに学ぶ、“あいまいさ”思考 (1/5)

日本人は手先の器用さ・繊細な感覚を生かしハード的に優れたモノを作ってきたが、形状・性能・価格といった「form」次元だけで戦うのは難しい時代に入った。「form」を超えて、どう「essence」次元にさかのぼっていくか、そのためにどう「あいまいに考える力」を養うか──次のステージはそこにある。

[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行なう。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 2011年、春の携帯端末機商戦。アップルはiPhone4の広告を展開していた。宣伝のためのポスターやリーフレット、Webページには「すべてを変えていきます、もう一度」「見たこともない電話のかけ方を」「マルチタスキングとはこうあるべきです」といったコピーが載せられていた。

 一方、日本の端末機メーカーの宣伝コピーはどうだったか――「最薄部8.7mmのエレガントデザインと磨きぬかれた映像美の世界」(ソニー・エリクソン『Xperia arc』)、「トリプルタフネスケータイ〜耐衝撃・防水/防塵構造」(NEC『N-03C』)、「ボタンが押しやすい約10.4mmスリムケータイ」(パナソニック『P-01C』)、「バカラのきらめき、歓びのかたち」(シャープ『SH-09C』)。

 アップルと日本メーカー勢とでは、明らかに商品の訴え方に違いがある。この違いは何なのか? そしてこの違いはどこから生じてくるのか?

 アップルは自分たちが考える携帯端末機の「あるべき姿」を提示し、主観的な意志を宣言している。一方、日本メーカーは、ハード的な性能優位をうたうのが目に付く。それは客観的で説明的な言葉だ。

 図1に示したように、アップルはコンセプトやスタイルといった「コト的」なものを創造することを志向し、抽象的な次元から絶対評価の眼をもって商品作りをしている。ちなみにここで言う「コト」とは、商品の差異化手法としてよく用いられる記号論的な付加価値(例えば、ある商品に伝説的な物語を付与することによりステータス性を醸し出すことができる)のようなイメージ要素としてのコトではない。「根っこにある何か本質的なコト」という意味で用いている。

ah_nau1.jpg

 一方、日本メーカーはこぞって、データやスペック(仕様・性能)といった「モノ的」なできばえにこだわり、具体的な次元から相対評価の眼で商品作りをしている。この両者の違いを見て、それが単にコトからのアプローチとモノからのアプローチの違いであると片付けるわけにはいかない。そこには「本質」をつかまえているかどうかの重大な差があるのだ。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright (c) 2016 INSIGHT NOW! All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ