アップルに学ぶ、“あいまいさ”思考(2/5 ページ)

» 2011年09月07日 08時00分 公開
[村山昇,INSIGHT NOW!]
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アップルは「essence→form」、日本勢は「form→form」

 世の中の事象には、「本質は形をまとい、形は本質を強める」という相互作用が働いている。内側に本質の円を、外側に形態の円を描き、それを表したのが図2である。

 アップルのiPhoneの成功は、彼ら自身がとらえた本質的なものを起点として、それを巧みに形態(携帯端末機のハードやソフト、そしてビジネスモデルといった目に見えるもの)に落としたことにある。つまり、「essence→form」の流れがそこにある。

 もちろん彼らとて最初から本質が明快に分かっていたわけではない。プロトタイプ(試作品)というモノを何度も何度も起こし、仮説として抱いた本質を研ぎ澄ませていくという「form→essence」の流れも同時に起こしたのだが、あくまで主導は「essence→form」である。言い換えれば、彼らの思考は「inside-out」(内から外へ)なのだ。

 さて、伝統的に優れたモノ作りをする日本人の思考はどうか。それは端的には「form→essence」主導の流れだ。“神は細部に宿る”を体現した伝統工芸品、あるいは茶道や華道、柔道、剣道、能、歌舞伎など「型」を究めて本質にたどりつく修業などはその典型である。日本人は古来、「outside-in」(外から内へ)の思考なのである。

 しかし問題は昨今の日本のモノ作りがどうかだ。「essence→form/inside-out」であれ、「form→essence/outside-in」であれ、本来、どちらが良い悪いというものではない。本質をつかみ取る限りにおいては、どちらが主導でもよい。

 携帯端末機市場を例に取れば、日本メーカーはやはりformから入っている。しかし、そこからformを究めることで、essenceの次元に上がっていっているだろうか……。残念ながらformの次元に留まり、相対的なハード面での競争を繰り返しているだけのように見える。つまり、「form→form」「outside-out」の思考に陥ってしまっているのだ。

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