連載
» 2011年06月30日 08時00分 UPDATE

郷好文の“うふふ”マーケティング:チョコから恵方巻まで……習慣を根付かせるための隠し味とは? (1/3)

ふとしたきっかけで作った“パスタ焼きそば”が意外とおいしいことに気付いた筆者。商品そのものの質も大事だが、それ以上にその商品やサービスを習慣として根付かせることがマーケティングでは重要と分析、そのための方策を検討してみた。

[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 “焼きそばスパゲッティ”から見えてきたことがあった。

 料理研究家の相棒cherryさんが、新しい焼きそばのレシピを教えてくれた。

 「パスタの焼きそばってよさそう」

 「パスタの……焼きそば? なんじゃそれ」

 「パスタなら、ふにゃっとしないから炒めても合うと思う」

 「なるほど」と思って、さっそく焼きスパを試作した。ゆでたスパゲッティを焼きそばの素(3食セットに付属する粉末でよく余る)で炒める。これが……案外うまい。

ah_yakisobapasta2.jpg パスタ焼きそば

 焼きそば=中華縮れ麺とは限らないのだ。タイでは米麺だってある。パスタにトマトソースは昔ながらの習慣だが、実は知恵のある商業者が仕掛けたのかもしれない。そう考えた時、ひらめいた。「マーケティングとは習慣作り」なのだ。

氷のないビールなんて……

 去る6月6日はロールケーキの日。6という数字の形がロールに似ているところからだが、日本記念日協会が認定したのは2005年。ほやほやの柔らかい記念日だから、その日にロールケーキがバカ売れすることも……まだない。

 業界が仕掛けて定着した食習慣といえば恵方巻。2月3日節分の日に、恵方巻にかぶりつくのは古くから関西にあった習慣。それを売り上げの落ちる1月下旬から2月にかけて、商売のテコ入れ策にした人は賢い。

 だが、道のりは長かった。1980年代前半からコンビニやスーパーが販売促進して、ようやく認知率は2000年前後に50%に達する。2009年に94%、食べた人は40%(ミツカン調査参照)となるまで、四半世紀の時間と莫大な販促費が費やされた。ロールケーキの日が巻物デーとして固まるには、時間とカネという凝固剤が必要なのだ。

 数えてみれば、食品がらみの記念日は年間80日以上ある。チョコや土用の丑の日を除けば、習慣にまで根付いている日は少ない。カレーの日(1月22日)や日本酒の日(10月1日)くらいは「あったな」と思うようになっても、こんにゃくやバナナダイエットと同様、一過性のものとなるかもしれない。歯磨きと同じ効果と言われる“食後のキシリトールガム”も浸透したとは言えない。メーカーはきっと歯がゆいだろう。

 ベトナムでは冷蔵庫が普及した今も、ビールに氷を入れて飲む習慣がある。暑い気候下、冷やすとキモチよくたくさん飲めるからだ。それを「本来の味が損なわれる」と考えたハイネケンは、冷えた瓶ビールのイメージ広告をしたが、水に流された。缶表面に印刷した山の色が、飲みごろに冷えると変化する缶を開発したクアーズビールも、「氷のないビールなんて、クリープを入れないコーヒーのよう」とベトナム人が言ったかどうか定かではないが、習慣という厚い氷を割るまでには至らなかった。

 消費者は新しい習慣に抵抗するのだ。そこで、企業の習慣戦略を整理してみよう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

ITmedia 総力特集