ドイツが生んだ傑作、ポルシェの魅力に迫る松田雅央の時事日想(3/4 ページ)

» 2011年05月31日 08時00分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

ポルシェ博物館のセールスポイント

 メルセデス博物館と比較し、ポルシェ博物館のセールスポイントは何だろうか。

 「博物館の規模と展示数ではメルセデス博物館にかないませんが、ポルシェ博物館の方が馬力(パワー)は上です」(館長)

 さすが、答えにそつがない。そう言えば、ポルシェは曲線美を追求しているのに博物館の建物は直線で構成されている。曲線を生かした建物のデザインは考えなかったのだろうか。

 「そういう案もあったのですが、メルセデス博物館の建物が曲線を基調にしているため、こちらはあえて直線にしました」(館長)

 やはり、博物館同士のライバル意識はあるようだ。

ポルシェ博物館(左)、館内展示のひとつ。黒いスポットに立つと、ポルシェの迫力あるエキゾースト音が聞こえる。写真のカップルは携帯で録音している(右)

ポルシェ356 ロードスター(製造開始1948年、左)、高速警察用のポルシェ。公用車にポルシェとは、ドイツならではの話(右)

 時代順に並ぶ歴代のポルシェを見ていると、デザインやコンセプトが大きく変化する転換点がいくつかあるように感じる。そのひとつが、1963年にポルシェ356の後継シリーズとして登場したポルシェ911シリーズだ。変化の背景には何があったのか。

 「顧客ニーズの変化です。356は元々2人乗りに開発されたため、後に加えられた後部補助席は狭いものでした。アウディーなど、スポーツタイプの4人乗りがあるのにポルシェにはない。顧客のフラストレーションが高まっていたのが理由です」(館長)

 911は室内空間を大きく取るためホイールベースを長くし、エンジンは新たに開発された水平対向6気筒を採用した。911は人気を博し世界の名車にも数えられている。

 そのポルシェも、1990年代前半、最大の海外マーケットである米国の経済不振により販売台数が大きく落ち込んだ。業績回復に寄与したシリーズのひとつが2003年に登場した同社初の5ドアSUV ポルシェ・カイエンだ。

 ポルシェがこだわってきた小型スポーツタイプの流れを離れたカイエンは、スポーティーで品質が高く、しかも家族でも使えるSUVが欲しいという、これも顧客ニーズに沿ったものと言えよう。ちなみにスティスカール館長のプライベート車(会社支給)はカイエンだそうだ。

ポルシェ911 GT2。2007年のフランクフルト国際モーターショーにて(左)、ポルシェ初のSUV カイエン。歴代ポルシェの中では異色のシリーズ(右)

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