コラム
» 2010年10月14日 08時00分 UPDATE

相場英雄の時事日想:会社というものは、あなたを守ってくれない (2/3)

[相場英雄,Business Media 誠]

「ネタ元は誰だ?」

 「君のネタ元は誰ですか?」――。

 今から十年ほど前、筆者が経済部の現場記者だったころの話だ。当時の編集局幹部から未明の居酒屋に呼び出され、こう迫られる一幕があった。

 当時、筆者を含めた数人の取材チームは日本の不良債権問題を追っていた。この中では、大手銀行のほか全国各地の中堅、中小の金融機関が不良債権の実態を隠す違法スレスレの取引に手を染めている実態をつかんだ。

 多数の証拠資料を取りそろえ、何度も報じた。資料の大半は役所の極秘資料であり、他社の後追いは不可能、取材チームは独走状態だった。当然、記事を出したあと、何度も強硬なクレームが入った。もちろん、手元の資料は本物であり、当事者たちにも確認を取った上でのネタであり、精度には絶対の自信があった。

 だが、思わぬ所から敵が現れたのだ。この項の冒頭で記した通り、社内でハシゴを外されてしまったのだ。

手を替え品を替えの嫌がらせ

 筆者が所属していた通信社はテレビや地方紙などに記事を配信するほかに、金融データや専門の市況記事を全国の金融機関向けに伝えていた。取材チームが報じた地方の金融機関のうち、複数の有力顧客からデータ配信契約を打ち切る、あるいは古巣が主催する講演会をボイコットするなど、手を替え品を替えの嫌がらせを受けた。

 編集局にも直接こうした攻撃が相次ぎ、最終的に当時の編集幹部が筆者を個別に呼び出した、というわけだ。

 記者たるもの情報提供者の秘匿、保護は最優先課題だ。だが、記者出身の編集局幹部は、顔を真っ赤にして冒頭の言葉を筆者に投げかけた。「マスコミといえども営利企業、上司としてネタの精度を把握しておく必要がある」というのがその理由だった。

 もちろん筆者はネタ元を明かさなかったが、当時の幹部が複数の金融機関に出向き、“書き過ぎだった”旨を告げたことを後に知った。事実上の謝罪だ。筆者がネタ元を明かしていれば、謝罪の席上で情報源が暴露された公算さえある。

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