会社というものは、あなたを守ってくれない相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年10月14日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


相場英雄氏の新刊『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)

 押収資料改ざん事件で大阪地検特捜部、そして検察全体が揺れているのはご存じの通り。同事件は主任検事逮捕だけでなく、元上司2人も逮捕されるという前代未聞の一大スキャンダルに発展した。

 検察内部のゴタゴタの詳細は他稿に譲るとして、今回は組織防衛をテーマに話を進めたい。検察の問題とは次元が違うが、筆者も長らくサラリーマン記者を務め、何度も組織から刺された経験を持つ。若きビジネスパーソンたち、組織は誰もあなたを守ってくれない――ということをキモに銘じておくべきだ。今回の時事日想は、検察の問題、そして実際に筆者が経験した出来事に触れながら進めてみたい。

 →“死んだ”に等しい検察は、蘇ることができるのか

組織はハシゴを外す

 郵便不正事件で厚労省の村木元局長の無罪が確定して以降、検察組織全体が社会から強い批判を浴びた。この中では、ストーリーありきの強引な取り調べへの反発が高まったのはご存じの通り。逮捕された検事たちは今、問題を一身に背負わされてしまったという圧力をひしひしと感じ、呆然としているはずだ。

 勾留中の前特捜部長は接見した弁護士に対し、「検事を辞めるつもりはない」と話しているという。また「(取り調べを行う)最高検が作り上げたストーリーに納得できない」とも語っているとされる。

 最高検、前特捜部長の言い分について、どちらが正しいかを精査するのが本稿の目的ではないし、どちらにも肩入れする気がないことをあらかじめお断りしておく。

 筆者が注目しているのは、前特捜部長が語った言葉が、組織防衛の犠牲になった無念さを体現している典型例だとみているからだ。換言すれば、“俺だけじゃないだろう”“俺を調べているあんたたちも同じようなことをやってきたはずだ”との思いが言葉の端々から浮かんでくる。

 エリートが集まり、最強の捜査機関と言われてきた特捜部でさえ、検察全体の組織を守るためになりふり構わず個人を人身御供として差し出し、挙げ句、ハシゴを外したのだ。

 一連のニュースが世間の耳目を集めているのは、検察というエリート集団が槍玉に上がっているからだけではない。多くのサラリーマンが同じような経験を持ち、その落とし所がどうなるか注目しているという背景がある。若きビジネスパーソン諸君、組織はかくも残酷なものなのだ。

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