ちきりん:赤木さんはわたしよりも、新聞に対する期待度が高いですね。赤木さんは、彼らが公的な使命を持つべきだと思っていらっしゃいますよね?
赤木:思っています。なぜなら、彼らは記者クラブを通じて会見の様子を報道できるから。それだけでも、ものすごい権限がありますが、彼らはそれを生かし切れていない。生かし切れていないから、ネットメディアやフリーライターなどから「記者会見を開放しろ」「オレにも報道させろ」と突き上げられているんですよ。
新聞はマスメディアとしての役割を果たしていないから、こうした問題が起きてきている。なので自分たちが大衆相手に報道ができるということを示していかなければ、存在意義をどんどん失っていくでしょうね。皮肉な言い方になりますが、「会社を守るためにも彼らはやってくれるだろう」と期待しています。
ちきりん:新聞社は私企業ですから会社を守るために、今後もお金を持っている高齢者向けの記事がどんどん増えていくと思います。もし新聞社に公的な使命を持たせたいのであれば、潰れそうなところを国が買い取るなどを考える必要があるのでは? 確かにNHKのような役割を持った新聞社があっても、面白いかもしれないですが。
そうすれば「税金を投入しているんだから、若者のことも書けよ!」といった動きが出てくるかもしれない。
赤木:新聞社に私企業と国営がある、という考えには賛成ですね。新聞社が思想的に偏りがない、なんて信じていませんから。なので大本営が発表するニュースも悪くない。国が世論をどのように形成したいのか、若者をどのようにしたいのか――といったことを新聞を通じて広報してくれるわけですから。
国が日本のことをどのように考えているのか。このことを示す手段として、新聞社を持ってもいいのではないでしょうか。
ちきりん:しかし国が新聞社を持てば、そこに権力と雇用が生まれてしまうでしょ。わたしは国営新聞案には賛成できませんが……。
赤木:ですが、現状の新聞は「ウチは私企業だから自分を応援してくれる企業の良いことを書く」といった感じ。これだと困る。
ちきりん:確かに。しかしそれでもわたしは、市場のことは市場に任せるほうがまだましだと思っています。人間はバランスを取ろうとするので、ものすごく狭いところばかり見ていると、広いところを見たくなるもの。だからセグメントが分断されることは心配してないです。
「みんなが相手のことを考えましょう」といった風潮になるよりは「みんなが自分の利益を先鋭化させて言うべき」だと思っています。例えば10代の人は携帯メディアの中で「10代としてはこういった世の中がハッピー」といったことを先鋭化させればいい。20代、30代のネットメディアも同じように主張すればいい。みんなが先鋭化すると、違いや論点が分かりやすくなる。
反対に全員が「お年寄りにはこうするべきですよね」「若い人はこうするべきですよね」と他のグループのことまで気を遣い出すと、結局みんな同じ意見になってしまう。巨大なメディアがすべてをカバーしてしまうと、そのメディア内で結論が調整されてしまう。なので世代によって違うメディアがあったほうが、日本をどのようにしたいのかといった議論をしやすくなると思うんですけど。
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