コラム
» 2010年02月18日 14時45分 UPDATE

世界でいちばん気持ちいい? タイ古式マッサージを体験する (4/5)

[誠Style取材班,Business Media 誠]

 足裏を押されると時々、ビクッと痛みが走る部分がある。「そこに対応する体の部位、眼や胃腸などが弱っている証拠」とのことだ。下の図は、足にあるセンを図解したもの。ちなみに私が痛かった部分は、指の付け根のあたりにある、目のマークが描かれた部分。PCに向かう時間が長いので、確かに納得。

ay_thai03.jpg 足ツボマップ。それぞれのツボが体のどの部位に連動しているか、分かりやすく描かれている

 左右の足が終わると、腿の付け根のセンを両手で加圧する。手を放すときに、ジワーッと暖かさが広がっていくのを実感する。次いで、左手、右手、腰、肩、首……と進んでいき、最後には時間をかけて念入りにストレッチ。ああ、あのアクロバチックな絵は、このストレッチのことだったのか。

 「タイ古式マッサージには確かにアクロバット的なスタイルもありますが、それは施術をする流れの中の1つに過ぎません。それに、バキバキと痛いわけではなく、無理がない範囲でのストレッチです。むしろタイ古式マッサージは、“世界でいちばん気持ちのいいマッサージ”と言われるくらい。始まって20分もすれば、全身がすっかりリラックスモードに入り、眠ってしまう人も多いんですよ」とのこと。

 実際、施術の最後のストレッチで普段使わない筋肉を伸ばしてもらうのはとても気持ちがよく、まったく痛みはなかった。少し照度を落とした照明、アロマオイルのいい香り、心地いい音楽など、リラックスできる環境の中で、眠りに落ちてしまう人がいるのも納得だ。

 全てのマッサージが終了し、自分の服に着替えたら「ジャスミンティー」をいただいてコースは終了する。冒頭の説明にもあったように、マッサージ後は、体内に溜まった毒素が出やすい状態になっているため、それを助けるためにも水分をたくさん摂った方がよいのだそうだ。確かに施術後、トイレに行きたくなった。

タイ古式マッサージの起源

 タイでは、マッサージ修行の本場は寺院と相場が決まっている。なぜ寺でマッサージの修行をするのか? そしてなぜ“古式”マッサージなのか? ここではちょっと寄り道して、タイ古式マッサージの起源についてご紹介しよう。

ay_thai05.jpg タイ古式マッサージの総本山「ワット・ポー」にある涅槃仏

 タイに仏教が伝来した、今から2500年ほど前のこと。日本ではまだ縄文時代だったころ、北インドのビンドゥサーラ王に仕えていたシバカ・クマールバッカ(通称シバゴ)というインド人医師が、タイ式マッサージの創始者だと言われている。ブッダと交流があった彼は、ブッダに従う弟子たちの集団、サンガ(仏教僧集団)の筆頭医師でもあった。この時代のサンガは多種多様なスタイルで治療を施しており、バター、油、はちみつ、果実、塩、樹脂を始め、魚、ワニ、豚、ロバの脂肪など実にさまざまなものを使って治療を行っていた。治療した症状も、熱病、眼病、腫れ物、腹痛、関節痛、足のひび割れ、消化不良、皮膚病、痔などこちらも多岐にわたっていたという。

 これらの症状を治療するなかで、“関節の痛みや足のひび割れにはオイルを使用してマッサージを施す”と書物に記載されており、これがタイ古式マッサージの始まりと言われている。シバコは、マッサージ以外にも、現代も注目されているミネラルやハーブなどの薬草が持つ癒やしの力についても後世に伝えており、今日、タイではシバコのことを“医学の父”と呼び敬っている。

 初期のサンガはかなり高度な医療技術を持っており、同じ仏教僧仲間に限らず、在家の帰依者にも治療を施した。治療を受けた人は教団に寄付をし、やがて教団の施設内で病人の治療が始まった。こうして仏教と医療は共に発展を遂げ、アジア各地に広がっていった。

 国民の大多数が仏教徒であるタイでは、「ワット」と呼ばれる仏教寺院が生活の中心であり、人々のコミュニケーションの場にもなっている。中には、仏教の教えを説くだけでなく、マッサージを教えるワットもあり、その総本山が、バンコクにある「ワット・ポー」である。ワット・ポーはタイで初めての学問所(大学)が開設されたところでもある。そのカリキュラムは、タイ式医学から占星術、仏教教理、美術など実に幅広い。ここには学問所の流れを継ぐといわれるタイ古式マッサージの学校が併設されており、現在でも多くの人々がここでタイ古式マッサージの修行に励んでいる。

 やや余談だが、1767年のビルマ軍による侵攻で当時のアユタヤ王朝は壊滅。その際、医学書のみならず、宗教教養、公式記録などの重要書類もすべて失われてしまった。1837年に国王ラマ3世の命により多数の医師がワット・ポーに召集され、わずかに残った医学書を頼りにその内容を石碑に刻んだという。

 これらの記録の中には、体内を流れるエネルギーライン“セン”が描かれた石碑が約60枚あった。これらの石碑群は、現在もワット・ポーの敷地内の壁にはめ込まれており、参拝客は自由に見学することができる。


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