子どもだましじゃありません。好奇心をくすぐるカメラ「Bigshot」郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2009年12月24日 11時00分 公開
[郷好文Business Media 誠]

売春宿の小さなカメラマン

 「初期コンセプトを描いた後、映画『未来を写した子どもたち』を観たんです」

 原題は『Born into Brothels』、直訳すると“売春宿で生まれて”。インドのカルカッタの売春宿で、生まれ育つ子どもたちを舞台にしたドキュメンタリーである。

 このドキュメンタリーの撮影者たちの当初の狙いは、インドの売春宿のドキュメントだった。だが、そこで育つ子どもたちの、あまりにも希望がない状況――女の子は将来売春婦に、男の子はポンビキ(売春のあっせん者)になるしかない――に接して、やりきれなくなった。

 そこで彼らは子どもたちにカメラを与えてみた。すると子どもたちはプロカメラマンでも撮れないような新鮮な写真を次々に撮ってきた。カメラには悲惨な環境を変える力があった。これが映画のイントロだ。

 「子どものためのカメラ、それも恵まれない環境にある子どもたちのためにカメラを作ろうと決心しました」

ブラックボックスなデジカメを解剖

 丸型やおにぎり型、横長型など、数々のスケッチから試作を経て「子どもたちがカッコいい」と飛びつく、色とりどりのBigshotが生まれた。


 「私はデザイナーではないですが、子どもはカッコ悪いと触ってもくれないからね」と教授は笑う。

 子どもたちの撮影好奇心を満たすため、レンズは「ノーマル」「80度のパノラマ」「3D」の3種類を搭載。レンズ部を回転させるとファインダー部も一緒に回り、レンズとファインダー機構の関係を学べる。裏蓋はパーツや構造を見えるように透明にして、各部品の名前も入れた。これで科学音痴の親も先生も安心……。

 だが、油断はならない。子どもたちが「どうして充電できるの?」「どうして写真は写るの?」とツっこんできたら、きちんと答えられますか?

 大丈夫。BigshotのWebサイトでは、各部の原理や動きが写真や図、動画も使って説明されている。発電ハンドルを回すとギアが回転してダイナモの発電する様子を見せる動画があったり、LEDフラッシュ機構ではダイオード原理のイロハからの説明もあったりする。

 基板の説明ページも楽しい。シャッターからコントローラー、メモリーやセンサーまで、14にわたる駆動プロセス信号が、基板上でピカピカ動く。私にとってもブラックボックスだったデジカメ、何となく理解できたような気がした。

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