子どもだましじゃありません。好奇心をくすぐるカメラ「Bigshot」郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2009年12月24日 11時00分 公開
[郷好文Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団 アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「マーケティング・ブレイン


 子どものころ、最初に買ってもらったカメラを覚えていますか?

 私はコダックのインタスタマチックカメラ。1960年代後半に一世を風靡(ふうび)した、カートリッジ式のフィルムカメラだ。小さなレンズで固定焦点。それでも小学生の私にとって、ファインダーをのぞいて世界を“切り撮る”瞬間はエキサイティングだった。あの時は生きることが今より新鮮だったと思う。

カメラを作ろう!

 その気持ちを思い出させてくれたのが、コロンビア大学(ニューヨーク)で開発されたカメラ「Bigshot」。子ども向けだが玩具ではない。3Dからパノラマ写真まで、最大100枚まで写せるメモリーを搭載。本体は組み立て式になっており、20個弱の部品で構成されている。組み立てながら機構や原理を学んだ後はみんなで撮影会、画像をシェアして楽しもう。

Bigshot

 Bigshotはカメラへの好奇心をかきたてる。その開発者がちょうど12月中旬に来日したので東京でお会いした。「なぜこんなカメラを作ったのですか」と聞いたところ、「カメラはとてもユニークな存在だからさ。自己表現ができて、コミュニケーションが生まれ、体験をシェアできる。携帯電話も優れているけど、カメラにはかなわない。『教育でカメラを組み立てよう。それも玩具じゃないものを』と思ったんです」

 彼はコンピュータビジョン、デジタルイメージング、そして人間と機械をつなぐインタフェースの世界的な権威、Shree K. Nayar(シュリー・ナイヤー)教授。まず、子どもたちの教育を想定して、簡単なカメラのスケッチを描いた。そこには最初から複数のレンズや発電用のハンドルが描かれていたという。

開発者のShree K. Nayar(シュリー・ナイヤー)教授。「Let's build a camera for education, not just a toy.」
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