インタビュー
» 2009年12月11日 08時00分 UPDATE

あなたの隣のプロフェッショナル:W杯パブリックビューイングの仕掛け人――イベントコンサルタント・岡星竜美さん (1/4)

2002年日韓W杯でのべ20万人が熱狂したパブリックビューイング。このイベントを仕掛けた男がイベントコンサルタントの岡星竜美さんだ。彼は今、地方を活性化させるためのイベント企画に取り組んでいる。数々の企画にたずさわってきた岡星さんのイベントにかける思いや、仕事の原動力について尋ねてみた。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

「あなたの隣のプロフェッショナル」とは?:

人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。

日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――“プロの仕事”にロングインタビューで迫ります。インタビュアーは、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏です。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。


 パブリックビューイング。それは言うまでもなく、スポーツイベントの際に、実際の試合会場とは別の会場にもお客さんを集め、大画面でリアルタイムに試合を見て、盛り上がるという観戦方法である。

 しかし実はこのパブリックビューイング、2002年の日韓共催サッカーW杯で、日本のイベントコンサルタントが現場をディレクションしたことから火が付き、それ以降、今春のワールド・ベースボール・クラシックを始めとした国際的スポーツイベントでも実施されるようになったということをご存じだろうか?

 そのパブリックビューイングの演出・進行を担った人物が今回の主役、シリウス代表取締役の岡星竜美さんである。日韓W杯でのパブリックビューイングは、スポーツイベントにおけるメディアを活用したインパクトある観戦方法ということで評価され、2003年の第50回カンヌ国際広告祭で「メディアライオン」(金賞)を受賞した。

 だが、岡星さんの活躍はそれだけにとどまらない。時代の新しい潮流を読んで、日本社会におけるイベントというものの概念を変革し、低迷する地域・地方をイベントで活性化するという顔も持っているのだ。

 多忙な中、インタビューに応じていただいた岡星さん。その語り口は覇気と若々しさにあふれ、お話の数々は明晰(めいせき)な論理に裏打ちされつつ、同時に夢と希望に満ちたものだった。今回は、この岡星さんがイベントの世界に何を具体的にもたらしたのか。そしてそれはどのようにして可能になったのかを明らかにしたい。

ah_okahosi.jpg イベントコンサルタントの岡星竜美さん

イベントとの出会いはアクロバットバイクの曲乗り

 「私は山口県の小さな町に生まれ育ちました。そこは曜日の感覚がなくなるほど刺激のない土地で、娯楽といえばお祭りと花火大会くらいなものでした。

 ところが小学生の時、普段は何もないお寺の境内にバイクの曲乗りが突如出現したんです。要するに大道芸のバイク版みたいなものですが、そのすごさに私は圧倒されたんです。しかも驚くべきことに、翌日そこに行ってみると、前日にそんなことをやっていた痕跡すら残さない見事な撤収ぶり! くぎ1本さえも落ちていませんでした。

 こつ然と現れ、こつ然と消えていくその姿は、私が当時愛読していた『怪人二十面相』のようで、その“仮設性”“聖なる1回性”に私は魅了されたのです。これが私のイベントとの出会いで、大人になってイベントの仕事に携わってみたいと思う契機となりました」

 時は流れて1980年、大学を卒業した岡星さんは東京で広告・編集プロダクションに入社。そして、バブル経済が一挙に拡大しつつあった1987年に電通映画社(現・電通テック)に転職して、子どものころに心を奪われた“仮設性”“聖なる1回性”の世界を自ら実現していった。

 「そのころは、例えば2000万円の予算のイベントを提案すると、先方から『5000万円の予算でやってくれ』と言われる時代でした(笑)。最大限の予算で超最大限の効果を追求しようという考え方です。でも私は、『本当にこれが最善のやり方なのだろうか?』と疑問を感じるようになったのです。最小限のコストで最大限の効果を生むことが大切なのではないのかと」

 岡星さんがそんな問題意識を持って独立してシリウスを立ち上げた1991年、バブル経済は崩壊。この急速な環境変化は、イベント業界に衝撃を与えた。

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