政権交代で不動産流通の仕組みは変わる?――さくら事務所 長嶋社長インタビュー大出裕之の「まちと住まいにまつわるコラム」(3/3 ページ)

» 2009年10月23日 08時00分 公開
[大出裕之,Business Media 誠]
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これからのホームインスペクション

 長嶋氏はNPO法人日本ホームインスペクターズ協会の理事長を務めており、ホームインスペクション(住宅診断)にも力を入れている。売り主にとっても、買い主にとっても、仲介する不動産会社にとっても、建物をしっかり見極めることがそれぞれのリスクヘッジになると長嶋氏は語る。

 「さくら事務所を始めてから11年になりますが、以前は中古のインスペクション業務はほとんどありませんでした。2007年後半からの新築マンション売れ行き悪化と反比例して、中古の売れ行きが良くなってきました。そこから、インスペクションの依頼が増え出しました。さくら事務所でお受けできる仕事は、現在月に最大30件なのですが、めいっぱいお受けしている状態です。

 民間のホームインスペクションは、現在は買い主からの依頼がほとんどです。お医者さんでいうと町医者みたいなもので、報告書を出して終わりではなく、調べた上でどうしたらいいかを依頼主にアドバイスします。

 私たちは良いとか悪いとかはあまり言いません。例えば雨漏りしていた場合、雨漏り自体は悪いことではなく事実でしかありません。『このまま放っておくと、これこれこうなる可能性がある。こことここを直すといくらかかり、ざっくり何年くらいはもつでしょう』という事実と可能性をお伝えします。第三者の立場をあくまで堅持し、買えとか買うなとかは言いません。そちらは仲介業の領域であり、ホームインスペクションは流通を活性化させるための仕組みの一部です。

 築年数が古い中古物件は瑕疵担保免責(不具合があっても売り主の責任を問えない)で流通しているものもあるため、『中古は怖い、新築がとりあえず安全』という新築神話が目立つことになっているわけです。欧米では常識のホームインスペクションが普及すれば、中古流通市場が何倍にも大きくなると思います。

 中古住宅の購入を検討中の方には、建物の状態を確認することをおすすめします。家賃とローンという比較だけではなく、建物が何年持つかで投資価値は2倍も3倍も違ってくることも知ってください。中古住宅は築年数でほぼ一律の価格になっていますが、実際の品質にはばらつきがあります。インスペクションを行なうことで、お宝ヴィンテージ住宅に巡り合える可能性もあるのです」

 長嶋氏の話を聞いていて、オバマ大統領の“CHANGE”ではないが、社会・市場のルールがいつかよりよい方向に変わっていくのではないかという可能性を改めて感じた。もちろん、市場は常に変化していくので、絶対的な正解はない。しかし、時代と人のニーズに合わせたルールの変更がされていってほしいと思う。

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