人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――“プロの仕事”にロングインタビューで迫ります。インタビュアーは、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。
「最後の晩餐ですか? マスメディア的には『もちろんラーメンです』って答えるべきところなのでしょうが、でもね……正直言えば、ラーメンは食べません」
しかしラーメンを生業にしているのに、一体なぜ?
「若いころ、坊さんか仙人になりたかったんです。地位も名誉もつまらん。それと同じように、僕は食べることにも執着しません。最後の晩餐はまさに人生最後の選択なのでこだわりますよ。でも淡々と死を迎えたい。常に『カッコよく』ありたいんです」
そう言って、イタズラっぽく微笑む。では結局、何を食べるのだろうか?
「ご飯、味噌汁、目刺し、サラダ、野菜ジュースですね」
こう語るのは、四半世紀の長きにわたって日本のラーメン業界をリードしてきた株式会社 力の源カンパニー代表取締役の河原成美さん(56歳)だ。
人気ラーメン店「博多 一風堂」(以下、一風堂)を国内外に約40店舗展開するほか、「五行」を初めとするさまざまな業態の店舗展開をも成功させ、まさに東奔西走の日々を送っている。商品開発のときには1日に10〜15杯のラーメンを食べ、この取材の前日も5杯食べたという河原さん。こうしたプロフェッショナルな表の顔とは裏腹に、プライベートは静かで、飄々(ひょうひょう)とした時間を過ごす人なのかもしれない。
「物事への執着を捨てて、精神の輝きを得るのが僕の美学です」と微笑む。その表情はテレビ番組などで垣間見る、厨房での鬼気迫る形相からはほど遠い。きっと、これまでの人生には計り知れないご苦労もあったことだろう。そこで本連載では「人間・河原成美」の想いや心の軌跡を中心に、3回にわたってお届けしたいと思う。
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