東大生のボクが、あの会社に注目した理由東大生の“投資脳”に迫る(2/4 ページ)

» 2008年12月25日 11時30分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

4期生の9人がAgentsを運営

 Agentsは2002年11月に発足。当初は「東大生による株式投資クラブ」という名称でスタートしたが、その2週間後、Agentsに改名した。14人の東大生が集まり、株式投資に関する勉強会や会社訪問などを行ってきた。そのAgentsに転機が訪れたのが、2004年6月のこと。東京大学Agentsのメンバー7人によって、『東大生が書いたやさしい株の教科書』(インデックス・コミュニケーションズ)を刊行。当時、現役東大生が書いた書籍としては先駆けで、10万部を超えるヒットとなった。

 そして1期のメンバーは卒業し、現在は4期の9人で運営している。クラブの活動内容は2週間に1回、勉強会を開催。それぞれが銘柄に関するレポートを仕上げ、勉強会で発表する。1銘柄を30分ほどかけて説明するため、レポート作成に要する時間は2〜3日かかるという。

Agentsの4期生

 このほか企業訪問も行っており、2008年は電子機器メーカーの「ワコム」や紳士服などを手掛ける「ユナイテッドアローズ」を訪問し、会社の経営方針などを社長やIRから話を聞いたりしている。

 クラブ活動のメインとなるのは、銘柄の分析だ。Agentsの代表を務める小野田喬(たかし)君は「株式投資を通じて政治や経済など、さまざまなことを学ぶことを目的としています。なのでレポートの内容も短期売買を目的としてものではなく、中長期的な内容となっています」と話す。

銘柄の選び方は大きく分けて2つ

 2週間に1度の勉強会。そして事前のレポート作成は、時間的な余裕がある学生とはいえ、負担は大きい。中には“時間切れ”となって、勉強会の当日に発表できない人もいるようだが、基本的には全員が2週間に1銘柄を分析する。数ある銘柄の中から、彼らはどのようにして銘柄を選んでいるのだろうか。

 選び方は大きく分けて2つある。普段、何気なく街を歩いていて気になったことなどから、推測していく方法だ。例えば、ユニクロの店に行列ができていれば「ほかのユニクロの店はどうなっているのか? ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングの業績はどうなっているのか? 競合他社の状況は?」など、いわゆる“街角経済”からヒントを得て、いろいろと推測していく。ときには「どういった商品が売れ筋なのか?」ということを確かめるため、店に足を運び、店員から直接話を聞くこともあるという。

東京大学の駒場キャンパス

 もう1つの方法は、情報の裏を“洗い出す”という作業だ。例えば、トヨタ自動車の業績について、海外でどのように報道されているのか、を英語版でチェックする。同時に日本のマスコミがどのように報道しているのか、英語版と日本語版の「違い」を見るというのだ。

 「ニュースを分析するときには、つねに英語版と日本語版をチェックします。例えば英語版で悲観的に報道されているのに、日本語版で楽観的に報じられているとします。一般的に海外の市場は英語版の情報を基に、株価も悲観的な動きになることが多いのです。もしそこで日本語版しか分析していないと、楽観論に引きずられ“買い”と判断するかもしれません。しかし日本の株式市場は米国の動きに連動することが多いので、株価は下落する可能性が高いのです」(森田徹君)

 このほか、日米Yahoo! の記事アクセスランキングも比較する。日本ではどの記事が注目されているのか。一方の米国ではどの記事がよく読まれ、それがマーケットにどれだけ影響しているのか。日米の世論の動きを俯瞰的(ふかんてき)に見ることで、その中から“ゆがみ”を見つける作業を行う。同じニュースが同じように報道されているのに、両国によって関心度に違いがあれば、そこに注視する。米国では注目度が高いのに、日本で関心が低ければ、やがて米国に引きずられるようにして注目が集まるかもしれない。このように世の中の動きを先読みするかのように、さまざまな情報を分析している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.