「情報の裏を読む」という作業に力を入れているAgentsのメンバーだが、もちろんそれだけにはとどまらない。彼らにとって裏を読むことは“気付き”に過ぎず、そこから銘柄の分析が始まるのだ。
メンバーの1人、村上礼君(文科二類の1年生)は2008年春、ある報道に気付きを感じていた。それは「小麦価格の高騰」について。2006年以降、世界的に小麦相場が上昇していたが、2007年後半に入ってもその勢いは止まらなかった。そして2008年2月には2005年の平均価格の5倍ほどに急騰していた。
「国内の製粉業者は使用する小麦の大部分を輸入に頼るため、世界的な原材料高で大きなダメージを受ける……というのが多くのマスコミの論調でした。また製粉会社の社長も『これほど価格が上がると苦しい』といったコメントが多かったのです」。しかし、マスコミ報道や経営人のコメントは本当なのだろうか。疑問を感じた村上君は決算書などを調べると、製粉各社の業績はそれほど悪くはなかった。
小麦の価格高騰は製粉会社にとってマイナス要因かもしれないが、企業努力によってマイナス材料がプラスになるのではないか。こう考えた村上君はさらに詳しく調べあげ、販促費の削減や新製品の開発、小麦価格の引き上げに対応した価格転嫁に注目した。
そして会社の利益を基準に、ほかの株式に比べて株価が割高か割安かを判断するPERを見ると、日清製粉25.7倍、東洋水産22.8倍、鳥越製粉19.0倍(7月25日現在)。数字が低いほど割安を示すPERを見ると、製粉業界の中で鳥越製粉は割安だった。しかし村上君には2つの懸念があった。1つめは「小麦価格の上昇が止まり、(隠れた好業績企業であるという)メリットが薄れるのではないか」というもの。だが日本政府は、製粉会社に売り渡す小麦価格を10月に2割前後引き上げるという報道があった。小麦価格を引き上げる可能性が高くなったため、「当分は大丈夫ではないか」と分析。
2つめは「鳥越製粉が小麦価格高騰から他社との価格競争に負けるのではないか」というもの。この点について注意は必要だが、市場予測(四季報)よりも会社は強気の予想を立てていた。もし価格下落に転じた際にも「リスクはそれほど高くはない」と判断した。
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