2008年度版「FeliCaの基礎知識」――(2)非接触ICカード編(1/3 ページ)

» 2008年07月24日 17時30分 公開
[房野麻子,Business Media 誠]

 2007年から2008年にかけて、FeliCa決済を導入する事業者は急速に増えたが、その多くはおサイフケータイでなく、カードタイプを中心とする運用を選んでいる。ここではカードタイプFeliCaの話題を中心に進めよう。

PASMOとの相互利用で存在感を増すSuica

Suicaで利用できるロッカー。鍵を持ち歩く必要がないので、使い勝手が良い

 国内のカードタイプFeliCaの中で最も広く普及しているのが、鉄道やバスといった公共交通のIC乗車券として使われているものだ。JR東日本の「Suica」はプリペイドで入金して繰り返し使える乗車券で、定期券タイプもある。2001年からサービスを開始して順調にユーザー数を伸ばしていたが、2007年3月に首都圏の私鉄・バスで利用できる「PASMO」がスタート。「PASMOかSuicaのどちらか1枚を持っていれば、首都圏の電車もバスもきっぷを買わずに乗り降りできる」という利便性が受け、PASMO、Suica共に、ユーザー数はハイペースで増え続けている。

 JR東日本はSuicaの電子マネー利用推進にも力を入れており、JR東日本が管轄するエリアの駅構内や駅ビルではほぼすべての店舗でSuica/PASMOを使って決済ができるようになった。自動販売機やロッカーのSuica/PASMO対応も着々と進んでいる(参照記事)

首都圏以外にも広がるIC乗車券

 この1〜2年の動きとしては、首都圏以外のエリアでもFeliCaを使った交通乗車券を導入する鉄道会社が増えていること、相互利用を進めていることも大きなトピックだ。関西エリアではJR西日本の「ICOCA」、関西の私鉄や地下鉄で利用できる「PiTaPa」がすでに相互利用を行っていたが、首都圏・関西圏以外でも“かざして乗る”場所が増えている。

 2006年11月にはJR東海の「TOICA」(名古屋・静岡エリア)、2008年5月には西日本鉄道「nimoca」(福岡エリアのバス、電車)がサービスを開始。このほかにもJR北海道が2008年秋に「Kitaca(キタカ)」、JR九州が2009年に「SUGOCA(スゴカ)」の導入を予定している。いずれも首都圏のSuicaと同じ、日本鉄道サイバネティクス協議会の共通規格を用いたFeliCaカードである。

 このように、FeliCaを内蔵したIC乗車券を導入する交通事業者は急速に増えているが、ほとんどがカードタイプのみでの導入となっている。おサイフケータイ向けにサービスを提供しているのは、JR東日本、伊予鉄道、長崎バスなど一部の事業者だけだ。

2008年秋から札幌エリアで導入されるJR北海道「Kitaca」(左)と、2009年春から福岡・北九州エリアで導入されるJR九州「SUGOCA」(右)

 また、人口減に悩む地方の公共交通事業者にとっては、乗客をいかに増やすかは非常に大きな課題である。最近の傾向としては、乗車券をIC化することにより、細かい条件を設定した割引サービスが提供できることに注目、系列百貨店や駐車場を利用した場合に乗車券の料金を割引するなどの施策を行っているところもある。

流通系電子マネーの登場で、プリペイド電子マネーのポイント戦略が変わる

 SuicaがFeliCaを使ったIC乗車券の代表格とするなら、FeliCa電子マネーの代表格といえるのがプリペイド型の「Edy」だ。累積発行数ではFeliCa決済各種の中で最多を誇り、利用できる場所も多い。am/pmやサークルKサンクスなどほとんどの大手コンビニエンスストアチェーン(セブン-イレブンとミニストップを除く)で利用できるほか、コーヒーショップ、ドラッグストア、デパートなど、加盟店は全国に広がっている。特に沖縄では利用率が高い(参照記事その1その2)。

 しかし2007年4月に流通系大手のFeliCa電子マネーがスタート、1年で急速に利用者を増やし、Edyを追っている。セブン&アイグループのアイワイ・カード・サービスが発行する「nanaco(ナナコ)」と、イオンが発行する「WAON(ワオン)」だ。特にnanacoの月間利用件数はSuica、Edyを抜き最多で、1カ月で約2800万回使われている(2008年5月調べ)

イオングループの電子マネー「WAON」(左)と、セブン&アイグループの「nanaco」(右)
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