2008年度版「FeliCaの基礎知識」――(2)非接触ICカード編(2/3 ページ)

» 2008年07月24日 17時30分 公開
[房野麻子,Business Media 誠]

 nanacoとWAONはいずれも、カードタイプとおサイフケータイ用アプリの両方が用意されているが、機能的には同等だ。nanacoが利用できるのはセブン-イレブンやイトーヨーカドー、デニーズなど、WAONが利用できるのはイオングループのスーパー(イオン、ジャスコ、マックスバリュなど)やミニストップなどで、いずれも系列の小売店が中心。Edyに比べると使える場所の汎用性に欠けるが、その分「利用するとポイントが貯まり、オトク」という点を打ち出している。

 Suica、Edyにもポイントに相当する仕組みはあるが、ポイント(マイル)をためるには別途登録が必要なシステムになっており分かりにくい。その点、nanaco、WAONは後発だけあり、電子マネー利用とポイント管理が一体化した、誰にでも分かりやすいポイントサービスになっているのが特徴だ。この流れを受けて、ビットワレットはEdyと関連づけるポイントシステムの見直しを行い、「Edyでポイント」サービスを開始した(参照記事)。これはANAマイレージだけでなく、楽天、ヤマダ電機、千趣会などのポイントプログラムからユーザーが好みのものを選んでEdyにひも付けられるというものだが、対象はカードではなく、おサイフケータイユーザーになる。

増えてきたマルチリーダー/ライター

 先行していた電子マネーの「Edy」「Suica」に続き、クレジット決済の「iD」「QUICPay」「スマートプラス/VISA TOUCH」など、FeliCaを使ったさまざまな決済方式が登場し、対応店舗も増えてきた。すると、エンドユーザーや小売店を中心に「分かりにくい」「店頭に複数の端末を置くのは無理だ」といった批判の声が上がった。

 このような状況下で、コンビニエンスストア各社は「全方式に対応する」という方針を打ち出し、POS連動型のマルチリーダー/ライターの導入を発表。2006年後半からさまざまなメーカーから複数方式に対応したマルチリーダー/ライターが発表されている。2008年2月には国内で初めて、Suica、Edy、iDの共有リーダー/ライターが「ラゾーナ川崎」で運用され始めた(参照記事)。現在は、サークルKサンクスが4規格(Edy、QUICPay、スマートプラス/VisaTouch、iD)、ファミリーマートやローソンが3規格(Edy、iD、QUICPay)※、ミニストップも3規格(WAON、iD、Suica)に対応するなど、3種類以上の決済方式に対応するコンビニエンスストアは珍しくなくなった。

複数の決済方式に対応したマルチリーダー/ライター。上はローソンやファミリーマートなどが導入したiD/QUICPay/Edy対応端末、下はイオン系スーパーなどで導入されているWAON/Suica/iD対応端末
※九州のローソンは上記3規格のほかnimocaにも対応するなど、エリア・店舗によって違いがある。

 端末の設置場所が限られているという点では、コンビニエンスストア以上なのがタクシーだ。タクシー大手の日本交通と国際自動車は、約5800台のタクシーに複数の電子マネーに対応した共有決済端末を導入すると発表(参照記事)。Suicaのみの利用から、秋以降には順次、iDとQUICPayにも対応していく。

より簡単、安価に導入できる――「IDm認証」を活用するサービスが増加

 3月に行われたIC CARD WORLD2008(特集記事)では、“FeliCaを簡単に使おう”という気運の高まりが感じられた。その中でも目立ったのが、FeliCaチップ固有のシリアルナンバー(IDm)を使うソリューションの増加だ(参照記事)。「SuicaやPASMOなどすでに流通しているFeliCaカードがそのまま使えて、おサイフケータイへのアプリ登録が要らない」という手軽さをアピールしていた。

 IDm認証を使ったサービスは、サービス事業者にとっても、導入コストが比較的安価で、携帯用サイトやアプリの開発が不要なこと、短期間で導入できることといったメリットがある。このサービスの広がりは、FeliCaリーダーなど関連機器が増加・低コスト化し、FeliCaカードやおサイフケータイが増加したことが主な要因だが、一方で「事前登録のプロセスが面倒だとユーザーが嫌がる」や「詳細な個人情報の取得・管理することを流通業者が嫌う」といった事情も背景にあるようだ。

 シンプルかつ低価格、短期でサービス開始可能をうたうのは、FeliCaポケット(参照記事)も同じだ。おサイフケータイ+アプリで実現するような高度な機能は要らない。既存のカードを使って、簡単・安価にサービスを提供したい――そう考えるサービス事業者は確実に増えている。シンプルかつ低コストなFeliCaサービスは今後も広がりそうだ。

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