若い世代を熱くさせる、5つの仕掛けとは?――串焼きチェーン「くふ楽」福原裕一氏(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(1/4 ページ)

» 2008年07月05日 01時04分 公開
[嶋田淑之,ITmedia]

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」とは?:

「こんなことをやりたい!」――夢を実現するために、会社という組織の中で目標に向かって邁進する人がいる。会社の中にいるから、1人ではできないことが可能になることもあるが、しかし組織の中だからこそ難しい面もある。

本連載では、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏が、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンをインタビュー。どのようなコンセプトで、どうやって夢を形にしたのか。また個人の働きが、組織のなかでどう生かされたのかについて、徹底的なインタビューを通して浮き彫りにしていく。


KUURAKUグループ代表取締役の福原裕一氏

 10〜20代の若い社員やアルバイトをどう活用するか? 若い世代の人材活用に悩む企業が多い中、注目を集めている中堅居酒屋チェーンがある。「くふ楽」「福みみ」「生つくね 元屋」「焼酎泡盛 豚の大地」などの店舗を展開する、千葉県発祥のKUURAKUグループだ。

 年間離職率5%、国内外の全18店舗で黒字経営を実現。2007年度「居酒屋甲子園」でも、覆面調査員による3カ月間に及ぶ調査の結果、「くふ楽本八幡店」は全国739店舗の中で、ベスト6入りを果たしている。

 これを実現してきたのが、オーナー経営者の福原裕一氏(43歳)だ。前編では同社の経営理念を、中編では、同社の戦略を、価値創造という視点から検討した。

 そこでこの後編では、同社のシステム/プロセスが、いかにして組織能力を高め、戦略を実現しているかについて見ていこうと思う。

最新の成功法則を取り入れているシステム/プロセス組織能力

 KUURAKUグループの経営システムや業務プロセス、そして組織能力の特性を、下の表にまとめてみた。表の左側の項目が、筆者がKURUAKUグループの特性と考えるもの。右側が、現代の日本企業にしばしば見出される点である。

システム/プロセス特性

ポイント KUURAKUグループ 多数の企業
1 基本的人間観 人間性善説 人間性悪説
2 リーダーシップ 仕事仲間に対するサポート 上司と部下の命令服従関係の行使
3 組織形態 フラット型 ピラミッド型
4 最小機能単位 自立・自律・自己完結型チーム 階層構造の中の各部門
5 経営理念の伝播・共有の促進 Learning、Living、Leisureの共有化 社長室に掲示、朝礼で唱和
6 情報共有 現場情報の全社的共有化 階層ごと、部門ごとに情報遮断
7 責任・権限の委譲 裁量権を意図的に拡大することにより自己啓発を促進(=Empowerment 責任は大きく、権限は小さい
8 失敗への対応 失敗の奨励 失敗を処罰
9 売上目標設定 各店舗が自主決定 天下り的なノルマ
10 日常業務の段取り 各店舗が自主決定 マニュアル依拠
11 コミットメント 全員主役型 指示待ち型
12 コミュニケーション 全方向型 上から下への一方通行型
13 人間力の回復・醸成 ハッピー&サンクス 地獄の特訓

組織・能力特性

ポイント KUURAKUグループ 多数の企業
14 組織メンバーの基本姿勢 有極性×創発性 糸の切れた凧×やらされ感
15 生き甲斐 個人と組織が輝くこと 組織の目的・目標とは無縁の自分の趣味
16 職場の位置づけ 「自己革新→自己実現」の場 給料獲得の場、世を忍ぶ仮の姿
17 お客との出会いに対する姿勢 お客の喜びは自分の喜び 十把ひとからげのありきたりな対応、単なるカモ
18 私とあなたの相互関係 あなた(=仲間)がいてくれてこその私 唯我独尊、自分は自分、他人は他人
19 集団特性 異なる個性の融合したプロ集団 各個人がタコつぼ化、うつの人が集まる集団
20 目的・目標への取り組み 目的や目標を完遂する喜びを共有 目標未達でも放置し、諦めムード

 以上20項目、KUURAKUグループの特性を挙げた。実はこれらのポイントは、成功企業だけが実践できているとされる内容ばかりである。

 驚くべきことだ。勉強熱心な日本の多くの経営者や経営幹部は、本で読んだり、セミナー・講演会で学んだりして、これらの項目については、みな知識としては知っている。しかしたいていの場合、分かっちゃいるけど古いやり方から脱却できないか、または、大胆に自社に導入しようとした結果、社内が大混乱に陥って失敗するか、のいずれかだ。

 KUURAKUグループでは、なぜこれらのポイントを成功裏に導入・運用できているのだろうか?

 福原氏はこう述べる。「『想いの強さ』の違いだと思います。『人のために!』というのがすべての前提としてあって、そのためには一体どうしたら良いのだろうか、という切実な心情の中で導入・運用するのが基本だと思うのです。そういう手法が流行だからとか、儲かりそうだからとかいうことでカタチだけ真似たって、うまくは行かないと私は思います」

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