インタビュー
» 2008年07月05日 01時04分 UPDATE

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」:若い世代を熱くさせる、5つの仕掛けとは?――串焼きチェーン「くふ楽」福原裕一氏(後編) (4/4)

[嶋田淑之,ITmedia]
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ポイント5:ハッピー&サンクス

 福原氏が実施したシステム/プロセス革新の中で、最もユニークなものとして、ハッピー&サンクスの制度化が挙げられる。

 「これは、24時間以内にあった『うれしかったこと』と『感謝したいこと』をチームのメンバーを前に発表しあう仕掛けです」(福原氏)

 日々を漫然と生きていると、いろいろなことが当たり前になってしまい、改めてうれしいと感動することもなく、何となく見過ごしてしまうできごとが増えてくる。あるいは、人が自分のためにしてくれたことに対して、感謝の念を自覚しないまま、過ぎ去ってゆくできごとも多い。

 しかしそれでは、チーム内での信頼関係を確固たるものにしたり、来店するお客の潜在欲求(Wants)を感知したりすることは難しい。ましてや、“客の喜びは自分の喜び”など望むべくもない。

 ハッピー&サンクスを日々実践することを通じて、小さな幸せとか喜びを自覚し得るようになるし、他人が自分のためにしてくれたことを確実にキャッチし得るようになる。

 それは、まず、職場の雰囲気を明るく前向きにし、仲間がいてくれてこその自分ということを自覚できるようになる。来店客との関係で言えば、彼らが心の底でどんな風に感じ、何を求めているのかを敏感に察知できるようになり、感動の共有が可能になるのである。また、5.で述べた成功体験を、成功体験として明確に自覚できるようになることも極めて重要であろう。

ay_shimada06.jpgay_shimada07.jpg 店舗の朝礼でハッピー&サンクスを行っているところ(左)。KUURAKUグループでは、「ハッピー&サンクス」というNPO法人の活動も行っている(右)

輝き躍動する組織(能力):

 以上、5つのポイントによって、KUURAKUグループの組織(能力)は、著しく上昇している。自己実現など、ES(従業員満足)としての個人価値、ならびにチーム力としての組織価値のいずれもが高い水準を実現しており、それが、顧客価値社会価値創造の原動力になっているのだ。

 同社の組織(能力)が、次のような特性を示していることに、筆者は注目している。

 第1に、自分の生きる方向性が明確で、自分で考え行動できる集団になっていること。方向性が定まらないまま、“やらされ感”を抱いていやいや仕事をしている人たちとは正反対だ。

 第2に、スタッフの生き甲斐が「個人と組織が輝くこと」つまり、「自分やチームが輝くこと」になっている。原田基龍さんはこう話していた。「チームの仲間たちと飲みに行くんですが、自然と仕事の話になってしまう。どうすればもっと店がよくなるか、アイディアを出し合うような雰囲気になるんですよ。愚痴が出ることはないですね」

 これは、スタッフにとって職場が、“自己革新を通じた自己実現の場になっている”ということを意味する。

 これを客との関係で見るならば、ひとりひとりの客の喜びが自分の喜びになる。そして仕事仲間との関係でも、“あなた(仲間)がいてくれてこその私”なのである。

 異なる個性が融合したプロ集団であり、昨今の企業社会を席捲する各個人が『タコつぼ』化し、うつ病にかかった(かかりそうな)社員が集まる集団とは正反対といえるだろう。

 こうした個人・組織だからこそ、目的・目標への取り組みに関しても、目的・目標を達成する喜びを共有することができる。会社がそういう組織風土になっているのである。それはまた、システム/プロセス価値の創造(=Cash Generation、現金創出力)を保証することにもつながる。

21世紀の“成功する”リーダー像とは?

 最近、成功企業の経営者の方々と接する中で痛感することがある。それは福原氏を含め、彼らが口にするキーワードがほとんど同一であるということだ。

 その中でも特に印象的だったことを挙げて本稿を締めくくりたい。

「現代のリーダーに求められること。それは、『人のために(貢献したい)』という想いの深さ・強さ。もう1つは、『小さな約束を守ること』、すなわち、他人が見ていないところでも、自分の発した言葉を誠実に実行することです」

 経営者のこうした真摯な経営姿勢こそが、21世紀の今、実は最大の成功要因なのかもしれない。

 →千葉県から世界へ! 串焼きチェーン「くふ楽」が目指すもの――福原裕一氏(前編)

 →お通し無料、接客マニュアルなしの理由――串焼きチェーン「くふ楽」福原裕一氏(中編)

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

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1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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