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» 2008年06月19日 00時00分 UPDATE

保田先生! 600秒でファイナンスを教えてください:第2回 ファイナンスの全体像 (1/7)

約10分で“とにかく分かりやすく”ファイナンスについて説明する保田隆明氏の連載。第2回は「個人向けファイナンスと企業向けファイナンスの違い」「損益計算書と貸借対照表の仕組みと基礎」などを紹介する。

[保田隆明,Business Media 誠]
JMA Management Center Inc.

 ヒロシが書店で様々な本を眺めながら思った疑問は、「なぜ個人に関するお金や数字の話はわかりやすいのに、企業のことになると途端に分からなくなってしまうんだろう」ということでした。「本のタイトルには会計・決算書・ファイナンス・財務・金融といろんな言葉が使われているけど、いったいこれらの違いってなんだろう」という疑問も浮かんできます。言葉自体は前から知っていても、その中身や違いとなると途端にあやふやです。

 書店に来る前にヒロシが先輩から言われたことは、「まずは決算書の概念と構造を理解できればいい」「うちの部署は事業戦略などを考えるので、ファイナンスの中でもコーポレート・ファイナンスについて理解できればいい」ということでした。

 あれこれ考えを巡らせはじめたヒロシでしたが、まずは手に取った「いちばんやさしいファイナンスの本」を読んでいくことにしました。

 本連載では、個人向けのファイナンスと企業向けのファイナンスの違い、損益計算書と貸借対照表の仕組みと基礎、決算書と時価総額とのつながりについて見ていきます。

 →第1回 決算書は読めなくても大丈夫

2つのファイナンスの範囲

 まずはファイナンスの全体像を把握しましょう。ファイナンスと一口に言っても、その範囲によって内容が大きく異なります。

yd_2.jpg ファイナンスの全体像

 ファイナンスは、まず企業におけるものか、個人に関するものかで分かれます。例えば、私たちの住宅ローンや生命保険、銀行預金、そして消費者金融ローンや自動車ローンは全て個人に関するものであり、まとめてパーソナル・ファイナンスの分野(図2の左半分)と総称します。住宅ローン・消費者金融ローン・自動車ローンなど、お金の調達に関わるものが左上の部分に該当し、生命保険・預金・株式投資など、お金の運用に関わるものが左下の部分に該当します。

 一方、企業に関するファイナンスを総称してコーポレート・ファイナンス(図2の右側全体)と呼びます。ただ、実際にはコーポレート・ファイナンスという言葉は、より狭義の意味で用いることが多く、この場合は企業の資金調達と資産運用の一部(図2の右側の実線部分)に該当する部分を指します。

 本連載でも主にその狭義の意味でのコーポレート・ファイナンスについて解説していきます。ちなみにコーポレートとは英語で企業の意味であり、コーポレート・ファイナンス戦略を日本語にすると企業財務戦略、となります。

 ファイナンスと一口に言っても、その範囲は非常に広いものです。例えば、「金融機関で勤務する人はファイナンスに詳しいはず」と思いがちですが、1人がこの広い範囲を全て網羅することはほぼ不可能です。パーソナル・ファイナンスとコーポレート・ファイナンスでは用いる理論も異なりますし、同じコーポレート・ファイナンスの分野でも、資金調達を担当している人と、資産運用に携わっている人では専門性は異なります。おのおのが細分化されているのです。

 なぜ今、企業にとってコーポレート・ファイナンスが重要なのかと言うと、「はじめに」のところでも述べたように、この分野が日本企業にとって「古くて新しい分野」だからです。

 企業は以前から資金調達を行っていましたが、お金は銀行から借りるものであり、それ以外の選択肢を考える必要はありませんでした。また、メインバンクから財務担当役員として出向者が来る、という企業も多数存在しました。そういう時代には企業が独自でコーポレート・ファイナンス戦略を考える必要性はありませんでした。

 それが、日本の銀行の体力低下に伴い、企業は独自に資金調達戦略を打ち立てて実行する必要性が生じてきました。それに加えて、かつては企業がお互いの株式を持ち合うことが多く、そうした企業株主はうるさいことを言わない存在でした。それが「持ち合い」をなくす方向に流れが進み、今では外国人株主やファンドといった企業の経営に口を挟む「うるさ型」の株主が多くなりました。企業にとっては株主とのコミュニケーションもコーポレート・ファイナンスの重要な対応事項となっているのです。

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