第2回 ファイナンスの全体像保田先生! 600秒でファイナンスを教えてください(2/7 ページ)

» 2008年06月19日 00時00分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]
JMA Management Center Inc.

 それまでメインバンクに頼りきりだった企業にしてみると、このコーポレート・ファイナンスが新しいテーマとして突如目の前に立ちふさがっている状況なのです。

 「間接金融の時代から直接金融の時代へ」という言葉を聞いたことがある方もいると思います。

 世の中のお金は「余っているところから不足しているところに流れていく仕組み」になっています。余っているところが投資家、そして不足しているところが企業です。

 この投資家から企業へお金が流れていく過程に銀行が介在するのが間接金融であり、投資家から直接企業にお金が流れていくのが直接金融です。直接金融の代表的な形は株式発行や債券発行による資金調達(投資家から見ると株式投資や債券投資)となります。

間接金融と直接金融の違い

 日本やドイツでは間接金融が戦後主流でしたが、それ以外の国では直接金融が比較的早く発展してきました。したがって、投資家(特に海外投資家)にとっては、企業にお金を直接提供する(投資する)という行為は、特に新しいものでもなんでもありません。現に海外では大学で普通にコーポレート・ファイナンスを教えています。

 日本の株式市場の売買高に占める外国人投資家の割合が6割を超える現在において、日本企業の経営陣がコーポレート・ファイナンスを理解しないまま、"投資慣れ"しているそれら外国人投資家と対峙すると大変なことになります。

 今や外国人投資家による株式の売買は企業にとって非常に重要であり、日本企業の経営陣は即急に対等の知識を身につける必要が生じているのです。

 次世代の企業経営を担う若手ビジネスパーソンにとっても、このコーポレート・ファイナンスの分野は今のうちに習得しておくべき分野です。もう少し後の世代になると、きっと大学の授業で普通に教えられるようになるでしょうが、すでに大学を卒業してしまっている世代であれば、自ら学ぶしかありません。

決算書は「写真」・ファイナンスは「動画」

 日本のビジネスパーソンにとっては新たな分野であるコーポレート・ファイナンスですが、銀行との二人三脚による資金調達時代から会計・決算書は存在していました。そしてこれらもファイナンスと呼ばれる分野に存在することは間違いありません。なので、「会計と決算書がわかればファイナンスも分かる」と思っている人が多いのですが、実はこれが誤解です。

 確かにファイナンスの世界で会計や決算書の知識は役立ちますが、それらを知っているだけではファイナンスを理解し、実践していくことはできません。特に、日本人にとって新しい分野であるコーポレート・ファイナンスを理解して対応するには、それらの知識は助けにはなりますが、それだけで太刀打ちするのは無謀です。

 代表的な例としては、日本では「決算書の情報だけで企業価値を評価する」ということが長年行われていました。それは決算書を読める人たちが、ビジネスの価値を知らずに決算書の情報だけで企業の価値を判断していたために起こったことです。

 今ではこのような慣行はなくなりつつありますが、つい10年ぐらい前まで普通に行われてきたことです(詳細は後述します)。

 企業価値の重要性がグローバルに認識される中、日本の慣行がグローバルスタンダードからかけ離れているままでは、世界の投資家からブーイングを食らうことになります。

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