第2回 ファイナンスの全体像保田先生! 600秒でファイナンスを教えてください(4/7 ページ)

» 2008年06月19日 00時00分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]
JMA Management Center Inc.

 この次に会社に発生する費用は営業外費用であり、代表的なものは借入金の利息支払いです。工場建設のためにお金を借りていれば、そのローンに発生する利息を支払う必要があります。ただ、企業によってはローンを全く抱えていない企業もあるので、この支払利息のコストは全ての企業に発生するわけではありません。営業外の損益を加味した後の利益が「経常利益」です(図6?)。

 その後、もし特別費用があればそれを引いて税前利益となります。特別費用とはその名の通り、その年に限って発生する特殊要因に基づく費用のことです。例えば、工場を閉鎖したときに発生した損失などです。逆に利益が発生すれば特別利益になります。

 そして、税前利益をベースに税金を支払います。日本では法人は税前利益に対して40%程度の税金を支払っています(実際の支払税金は計算額と異なる場合が多々ありますがとりあえずそのように理解します)。最後に残るのが純利益です(図6?)。

利益が出るまでの過程

 これら一連の流れを見ると、図7の階段は実にきれいに費用を仕分けしていることがわかります。階段にしているのはキチンと意味があるのです。そしてそれら階段の費用の中身がまた細分化されるので損益計算書の項目は多岐に渡ります。各費用の金額をはじいて一生懸命損益計算書を作成する目的は、会社の売上・費用を整理してこの階段状の図を作り、会社の状況を把握する、ということにあります。

 当然ですが、各費用部分がより小さく、そして利益部分がより大きい階段が理想的な業績を上げている企業になります。

 さて、ここで重要なのは、これら利益や費用の用語を覚えることではなく、「構造を理解する」ことです。損益計算書とは売上高から費用を引いて利益を求めるために利用されるもので、費用を種別によって区分けした結果、階段状になり、それぞれの過程で出てくる収益に名前を付けている、というだけのことです。

 私たちの日常でも、家計簿をつけている方にとっては、この損益計算書の作成のようなことは毎日行っています。ある期間に収入と支出がそれぞれいくらあり、赤字なのか黒字なのか、そしてその金額はいくらかを把握するのです。損益計算書はその企業版でしかありません。

 では、次に実際の企業の損益計算書を見てみましょう。

ある企業の損益計算書

 図8ではなにやら無味乾燥な用語と数字が並んでいます。多くの決算書の解説書では、この無味乾燥な損益計算書をもとに各用語が何を意味しているかの説明から始まります。これはつまらなくて当然です。この損益計算書を図7のような階段状の図に転換してみてください。丸のついているところが階段に使う項目です。きっとその方がスッキリと理解できますよね?

貸借対照表の存在価値とは

 さて、私たちは今までの生活の積み重ねで様々なモノを所有しています。換金性の高いものでは家・車・家具・家電・高級アクセサリー・着物などがあります。最近はネット販売のおかげで、古本や古着も換金性が高くなってきました。中には売りたくても買い手のつかないものもあるでしょうが、それらは「ゼロ円」としてカウントすれば、私たちの所有するものは何らかの金銭的価値に換えることができます。そして、その合計金額が私たちの所有する総資産、ということになります。

 他方、ローンや割賦で購入したモノがある場合は、負債を抱えていることになります。家、車、高級バッグなど、私たちは日々ローンのお世話になることがあります。また、ローンを組まなくとも、給料日やボーナス日をあてにして、クレジットカードで支払うこともよくあります。それらの合計金額は、私たちが支払うべき総負債、ということになります。

 さて、皆さんが保有している資産の換金価値の合計と負債の合計額を比べて、資産の方が大きければ問題ありませんが、負債の方が大きい場合は、持っているものを全て売却してもまだ借金が残ることを意味します。いわゆる「債務超過」の状態です。

個人の保有する資産と負債

 個人の場合は、こうして資産と負債の金額を洗い出して把握する機会は亡くなって遺産相続を行うときぐらいしかありません。

 ですが、企業の場合は毎年この資産と負債の洗い出しを行い、自社の資産・負債状況の把握を行います。そしてその状況を示す書類として決算書の1つである貸借対照表(BS)が存在します。これも長い熟語でとっつきにくい印象がありますが、重要なのは資産と負債を「対照」させるということで、絵で構図を把握すれば内容は至極シンプルです。

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