連載
» 2008年05月17日 00時00分 UPDATE

嶋田淑之の「この人に逢いたい!」番外編:“本物”の温泉とは?――ポスト秘湯ブームの今、満足できる温泉に出会う法 (1/4)

3回にわたり、白骨温泉の入浴騒動とその後のてんまつをレポートした。温泉偽装問題の後、よく耳にするようになったのが「温泉かけ流し」という言葉だ。「満足できる温泉に行きたい」「いいお湯に入りたい」という希望は、秘湯の宿に宿泊すれば叶うものなのだろうか? 改めて考えてみよう。

[嶋田淑之,Business Media 誠]

 若い世代の海外旅行離れが進行する中、国内の温泉地は、折からの秘湯ブームもあって、女性グループやカップルであふれかえっているように思える。ところが実際に行ってみると、そうでもない。むしろ、旅行会社が企画したツアーで来ている年配者の数の方がずっと多い。若い人々は、一体どこへ行くのだろうか?

 そこで20代の女性を中心に聞いてみたところ、その答えは興味深いものだった。「大都市の健康ランドにある温泉にしか行ったことがないが、それで十分」「どこの温泉地・温泉宿に行けばよいか分からない」「本格的な温泉宿はすごく高く、国内の温泉に2日行くお金があったら、ハワイに1週間行ってこられる(だから温泉には行かない)」などが代表的な意見だった。

 →“入浴剤投入”発覚から4年――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(前編)

 →田中康夫県知事が踏み込んだ、その時――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(中編)

 →涙の会見後、何が起きたのか――白骨温泉・若女将が語る「事件の真相」(後編)

広がりを見せる“温泉への戸惑い”?

 これまで3回にわたって、白骨温泉の入浴剤騒動とその後のてんまつを見てきた。2004年に全国に波及した温泉偽装発覚以降、温泉の専門家が多数登場し、「源泉かけ流し」「濾過循環(ろかじゅんかん)方式」「加温・加水・塩素注入」「マイナスイオン」など、難しい用語を連発するばかりで、結局、どれが良いのかもよく分からない。しかし旅行代理店の店頭にある各種ツアー案内のチラシを見ると、そんなことは、どこにも書いていない。しかもイメージ的に、総じて高そうだ。

yd_01.jpg

 だったら、手軽に行けて設備の充実している「健康ランドで十分」という気持ちになってしまうのだろう。もちろん念入りに調べれば、上記のような疑問は直ちに氷解するのだが、そこまで温泉に凝る人はむしろ少数派だ。大多数の人々は、分かりやすさを求めている。

偽装の次は隠蔽? 戸惑って当たり前の現代温泉事情

 少なくとも筆者は、こうした大多数の人々の戸惑いは当然だと思うし、むしろ、非常に本質を突いた考え方をしていると思う。現代日本の温泉地や温泉宿に関する状況は、それほど分かりにくい上に、明快かつ積極的な情報公開」が行われているとは言えないのである。中には、偽装の次は隠蔽かと冷やかされても致し方のないケースも見られる。

 温泉宿に対する好みは、もちろん百人百様であろうが、現代の人々、特に都市生活者や女性客の基本的なニーズは、次の3つではないだろうか?

  1. 「ホンモノ」
  2. 「オンからオフへの切り替えが可能」
  3. 「洗練されたセンス・機能性」

 「ホンモノ」とは、偽装がないのは当然のこととして、むやみに人の手を加えず、そのもの本来の特徴や魅力を生かしていることを指す。食事を重視する客は、地の食材にこだわり、生産者の顔が見えるような安心・安全なものを使い、その土地の歴史や文化を感じさせるような上質な料理を供してくれるところを好む。

 また、温泉そのものを重視する客であれば、源泉をできるだけ「自然」もしくは、それに限りなく近い状態で提供してくれることを望む。しかし、現実には、温泉の泉質1つをとっても、上記のように加水・加温・塩素注入がどうしたこうしたとか、とても難解な上に情報公開レベルも決して高いとはいえない。要するにどこがホンモノなのか、よく分からないのだ。そして実際、日本の温泉宿の70%以上は、不足がちの源泉を使い回す濾過循環方式を採用しており、その泉質はホンモノとは、言い難いところがほとんどなのである。

yd_02.jpg

 次の「オンからオフへの切り替えが可能」とは、日々の仕事とか人間関係のストレスから解放してくれるということ。秘湯が注目されるゆえんだ。しかし、ブームになっている秘湯とは、要するに多くの人々が殺到する観光地なのであって、「本当にそこに行って癒されるのだろうか?」という素朴な疑問にぶつかることになる。だったら空間的にも遠く、日本を忘れさせてくれる海外の方が「オフに切り替えやすい」という発想にもつながってゆく。

 最後の「洗練されたセンス・機能性」とは、温泉宿に対して大都市の一流ホテルに匹敵する清潔感とかオシャレな感性とか利便性を多少なりとも期待しているということ。最近よく見られるケースでは、女性客用の浴衣は50〜100種類の中から好きなデザインのものを、客が自由に選べたり、各部屋のアメニティグッズにもこだわっていたりする。 

 食事に関しても素朴一辺倒ではなく、メニュー構成、調理法や盛り付けなどに、最新トレンドを取り入れたりしている。トイレも和式の共同便所ではなく、各部屋に温水シャワー付き便座が設置されている宿が喜ばれる。しかし実際には、興味を持った温泉宿がどれくらい清潔ででセンスがよく、利便性が高いのか、必ずしも詳しくは分からないのが現状だ。

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

Loading

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -