2007年7月26日、アウディ ジャパンが国内販売を発表した「アウディR8」。420馬力のミッドシップエンジンを搭載し、最高時速301キロの実力を持つこのマシンで、アウディはプレミアムスポーツカー市場に参入する。そのデザインは、従来のアウディが持つ知的なイメージを継承しつつも、デザインボードから飛び出したような大胆なものに仕上がった。 |
デザインを担当したフランク・ランベルディ氏は、1999年に同氏がデザインしたレースカー「R8」をヒントに、そのフォルムを作り上げていった。「レースカーR8は、リアアクスルのすぐ前にエンジンを搭載するミッドシップレイアウトを採用している。それによりドライバーは前に収まり、後ろはテクニカルなパートになる」(同氏)。そして同じくミッドシップエンジンを搭載する量産型R8のボディには、“パッセンジャー”と“テクニカル”を分ける力強いカットを刻むことで、デザインを強調した。 |
プレミアムスポーツカーとしてふさわしい、“ユニークでエモーショナル”な外観を実現するために採用されたのが、ヘッドランプとテールランプとをつなぐ「キャラクターライン」。前後のホイール部で曲線を描くそのラインは、ボディに立体的な陰影を持たせ、印象をよりシャープなものにする。 |
さらに、このキャラクターラインはフロントバンパー、リアバンパーに伸びていき、1本の輪を描く。「クルマ全体に走るダイナミックで理論的なこのラインは、アウディらしさをもっている。テニスボールに刻まれたラインのように終わることのないこの線を、私は“ループライン”と呼んでいる」(同氏)。このループラインを採用することで、ボディの一体感とドラマチックな力強さを表現したという。 |
「スケッチがそのまま実物になった。非常に満足している」と同氏が語るように、アウディR8には、従来のアウディにはないコンセプチュアルなパートが多く見られる。テールランプの下に配置されたエアアウトテークはその例のひとつだ。また、ドアパネル後方に設けられた「サイドブレード」と呼ばれるパートは、カラーをカスタマイズすることが可能なほか、エアインテークとしての役目も果たす。こうした機能とデザインの両方を兼ねた要素は、バイクからインスピレーションを得たものだという。サイドブレードの片面にはレーシーなフューエルカップも備えた。 |
リアウインドガラスからのぞき見ることができるエンジンも、アウディR8の大きな特徴。後部のテクニカルな印象を際立たせ、高い走行性能を予感させる。また、LEDライトで縁取られた精悍なヘッドライトには、優美さと攻撃性を兼ね備えたワシのイメージをデザインに反映させたとランベルディ氏は話す。 |
コックピットにはレーシングカーの要素を取り入れ、パネル類がドライバーを取り囲む「モノポスト」構造を採用した。「ぴったりと合うスーツを着ているような感覚」でドライバーと車が一体になれるデザインを目指している。計器部のルーフから伸びる楕円形のラインが強調され、カーボンパーツをカスタマイズすればよりレーシーな雰囲気を作り出すこともできる。 |
キャラクターラインやLEDで縁取られたヘッドライトは、2007年ジュネーブモーターショウで公開された「アウディA5」にも派生しており、今後の新しいアウディのデザインコンセプトとして注目を集めた。 「最高のプレミアムブランド」を目指すアウディのデザインは、さらなる進化を目指している。 |
取材・文/+D Style編集部
取材協力/アウディ ジャパン http://www.audi.co.jp/