“歌舞伎町案内人”としていくつもの著作を世に送り出している李小牧(りーしゃむ)さん。不夜城のハイ&ローを知り尽くした彼がプロデュースした「湖南菜館」が今年9月、歌舞伎町一番街に鳴り物入りで登場した。同店では、彼の故郷であり毛沢東の故郷でもある中国・湖南省の絶品料理を楽しむ事ができる。 湖南料理の特徴は、赤唐辛子の鋭い辛さとさりげなく織り込まれた酸味。内陸に位置するため肉や魚を塩漬けにする事が多く、味つけはあっさりしつつもダシがしっかりしているため、コクがあると言われる。北京、広東、四川、上海に次ぎ中国第五の料理と言われるだけあってその実力は侮れない。 同店で腕を振るうのは、かつて中国国家主席・毛沢東の料理人をつとめていた石萌祥さんの弟子である陳偉平さん。本場・湖南省から招聘(しょうへい)されて、同店の料理長に就任した。 そんな料理長が繰り広げる肉料理は、大陸的な大胆な調理と繊細な味わいの妙がポイント。 |
冷しゃぶの湖南風ニンニクソースは豚肉で胡瓜をくるりと巻き、さっぱりしたソースでいただく一品。毛沢東が愛した湖南風豚肉の角煮も外せない。しかし最も度肝を抜かれるのが、骨付きの蒸し鶏を中華包丁でダイナミックにスライスし、唐辛子、山椒の真っ赤なソースを回しかけた特製よだれ鶏であろう。凝縮された鶏肉の旨みに脳天直撃な激辛ソースが絡まって、次から次へとよだれが溢れ出る。 |
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パンチのある肉料理の次にご紹介するのは、渋谷のマークシティの裏通りにひっそりたたずむ「かねこ」。喧騒を逃れて暖簾をくぐれば、大人の隠れ家と呼ぶにふさわしい、独自の時間を歩んできた和空間が存在する。訪れる客層も、渋谷の街を歩いている年齢層からはぐっと年上の、オトナの食通が多い。 店主の金子晴夫さんは、板前だった父に見込まれて、学校卒業後、すぐに料理人の道に入ったという生粋の料理人である。 「兄弟の中で末っ子だった私だけが、板前の修業に出されたんですよ。今にして思えば父は、自分の跡継ぎを仕込むために、味覚や根性などの料理人としての素養を厳しく観察していたんでしょうね」 東京出身の金子さんだが、数々の日本料理店で修行したため、出される料理は関西風の味付けが多い。繊細な出汁と盛りつけが多くの食通を惹きつける。 |
築地を中心に、厳選した各地の業者から直接旬の素材を仕入れ、四季の手料理をコンセプトとする同店は、海鮮しゃぶしゃぶやすっぽん鍋が名物であるが、それでいて実は肉料理にもきめ細かいこだわりを持つ。 地鶏のかす焼は岩手から取り寄せた地鶏を酒かすに漬け込んだもので、ひと噛みごとに鼻腔を抜けてゆく甘い香りが実に見事である。牛肉レタス巻きもこの店の魅力を存分に伝える一品だ。力強い牛の味に華を添えるのは、八丁味噌・信州味噌・西京味噌と酒、みりん、20種類もの香辛料を丁寧に練り上げたこのお店の特製味噌である。 シメは、上品な味わいながら野生のパワーが静かに息づく馬刺し。夜は更け、雅な和の肉料理で心は豊かに色づく。明日への活力になること間違いないだろう! |
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メディアコラボプランナー・作家。著書に『何もいいことがなかった日は』(PHP研究所)。 |
取材・文 / 華麗 叫子
企画・構成/似鳥 陽子