おサイフケータイでチケット&クーポン。その効果は――ディズニー・モバイル Interview:(2/4 ページ)

» 2007年03月14日 08時43分 公開
[神尾寿,ITmedia]

 当時のおサイフケータイは台数規模では増加基調にあったものの、関係者が利用促進に頭を悩ませていた時期である。特にディズニー・モバイルのメインユーザー層である「若い女性」向けの成功事例は、ほとんどない状況だった。ディズニー・モバイルに不安はなかったのか。

 「実際のところ、(女性の利用比率が低い事への)不安はなかったですね。逆にそこは、共同で実証実験を行ったフェリカネットワークスと、『これから女性の利用比率を上げる』と意見が一致した部分でした。

 我々はすでに約400万人規模のお客様を抱えていましたし、実証実験を始める前に(ディズニー・モバイル会員の)おサイフケータイ所有率をアクセス履歴からカウントしました。その母数の上でなら、十分に実証実験を行う価値があると考えました」(鳥海氏)

 ディズニー・モバイルはすでに携帯コンテンツ分野で多くの会員を獲得しており、その登録情報からユーザーの利用端末が把握できる。またディズニー・モバイル会員は、いわば“ブランドで囲い込まれた”状況にあるため、実証実験の開始前に潜在ユーザー数とおおよその利用規模の想定が可能だったのだ。この背景が、ディズニー・モバイルにおサイフケータイ活用を決断させる“後押し”になった。

 さらに実証実験をするにあたり、ディズニー・アート展というタイミングはよかったと、鳥海氏は話す。

 「実際に電子チケットやクーポンを、すでに稼働している店舗に同時導入するとなると運営面での負担が大きくなります。しかし今回の実証実験は、メーン会場はディズニー・アート展の一カ所だけ。我々の目が届く範囲内でやりやすかった」

 一方で少しでも多くの会員にタッチパスを利用してもらうため、サービス内容だけでなく、FeliCaアプリの細部に至るまでこだわった。アプリはディズニー・モバイルとフェリカネットワークスの共同開発だが、特にディズニーが重視したのはUI(ユーザーインタフェース)の部分である。

 「当初から若い女性がターゲットでしたから、『親しみやすい』『使いやすい』といったUIの部分はこだわりました。ディズニー・モバイル会員向けですから、ディズニーのキャラクターを起用して使って楽しいものを意識して作りました」(鳥海氏)

 実際のタッチパスのアプリを見ると、かなり凝った作りになっている。背景やイラストがかわいいのはもちろん、メニュー遷移によるアニメーションや利用するスキンを5種類から選べるなど、とかく実用一辺倒になりがちなFeliCaアプリとは一線を画す。まさに「使って楽しい・親しみやすい」ものだ。こうした“使いたくなる”FeliCaアプリの作り込みは、エンタテインメント分野に強いディズニーならではだろう。

タッチパス用アプリ。ディズニーのキャラクターが効果的に使われているだけでなく、ユーザーにも機能が分かりやすい

 また、おサイフケータイの利用促進でハードルになる「FeliCaアプリのダウンロードが必要」の部分だが、こちらもディズニー・モバイルでは問題にならなかったという。これはそもそもディズニー・モバイルの会員がエンタテイメント分野でコンテンツやアプリのダウンロードに慣れていたことと、「ダウンロード中にプログレスバーをつけるなど、ユーザーにとってわかりやすい(UIの)作りについて、ディズニーモバイル側から指摘やアドバイスをいただけた事が導入のハードルを越える要因になった」(フェリカネットワークス ソリューションビジネス部 伴 拓彰氏)ようだ。

 こうして実現したタッチパスは、結果として約3万人に利用された。当時のおサイフケータイがまだ普及拡大期であり、利用促進の途上であったこと、さらに今回の導入がディズニーアート展に限定した期間限定の実証実験であったことを鑑みれば、十分な成果といえるだろう。

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