PHSの場合、携帯電話などよりもさらに小さい「マイクロセル」と呼ばれるサイズのセルを使います。サイズとしては100〜数100メートル程度になります(3月15日の記事参照)。また、携帯電話の基地局アンテナがビルの屋上などの高いところに設置されるのに対して、PHSのセルは、電柱や公衆電話の屋根などのあまり高くないところに設置されます。セル範囲が小さいため、高いところに立てるのはあまり有利ではないからです。
このため、PHSのセルがカバーする領域は、ビルなどに影響され、道路の形に近い形状になります。このようなマイクロセルを「ストリートマイクロセル」と呼ぶことがあります。
そうなると有利なのは、なるべく交差点付近に基地局を設置することです(図)。交差点に基地局を設置すれば、道の途中に設置する場合に比べて4方向にセル範囲を伸ばすことが可能になります。
ただしこの場合、セル形状が複雑であるため、チャンネル割り当てがかなり複雑になります。たとえばビルの構造や街路樹などによってセル形状が変化してしまうため、固定的にチャンネルを割り当てる方式では対応が困難です。このためPHSなどでは、基地局や端末が干渉などを考慮して、空いている利用チャンネルを自動的に使うようになっています。
端末が通信しながら移動したとき、隣のセルへと移るときに行われる処理をハンドオーバーといいます。簡単にいえば、別の基地局を使って通信を継続させることです。このとき、FDMAでは、その原理から必ず周波数の切り替えが行われます。
なお、ハンドオーバーが行われるのはセルの境界線近辺ですが、電波状態によっては、境界線の手前でも切り替えが行われたり、境界線を越えてもハンドオーバーが起こらないこともあります。これは通常、通信品質や電波強度などでハンドオーバーの判定が行われるためです。ハンドオーバーが起こる地点が物理的なセルの境界ということもできます。論理的なセルの形は決まっていますが、実際の境界は、複雑な形状になっているといってもいいでしょう。
携帯電話のハンドオーバーは、ネットワーク側で管理されており、端末はその指示に従って動作します。しかしPHSなどでは、端末側でも電波強度や他の通信との干渉などを測定し、基地局との再接続を行う動作も行います。この方法では、再接続時に時間がかかり、高速での移動にはむきませんが、セル形状が複雑で、さまざまな要因で変動するPHSには必要な機能になっています。
このようにハンドオーバーは、ネットワーク側で管理するものと端末で管理するものの大きく2タイプに分けられます。しかしW-CDMAでは、主導権を持つのは端末側ですが、接続中の基地局を介して、ハンドオーバー先の基地局へタイミング調整を依頼する、中間タイプのハンドオーバー処理を行います。W-CDMAのハンドオーバーについては、次回以降で詳しく解説します。
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