セルラーホンの「セル」とは何か? 塩田紳二のモバイル基礎講座 第9回(2/3 ページ)

» 2005年10月31日 20時20分 公開
[塩田紳二,ITmedia]

 くり返し数を大きくすると、一定サイズの周波数帯域では、個々のセルで使える周波数帯域が小さくなり、収容数が減ってしまいます。またくり返し数を小さくすると、今度は、同じ周波数を使うセル同士の間隔が短くなって、その影響が大きくなります。電波は、場合によっては遠くまで届いてしまうこともあるのです。

 なお、セルは小さくするほど、全体として同時に通信できる数が増えます。携帯電話では、1〜数キロメートル程度の大きさのセルを使うことが多いようです。しかし、小さくしすぎると今度は基地局の数が増え、エリアカバーのための設備投資がかさんでしまいます。

 都市部などユーザー数の多いところでは、セルを小さくし、基地局の数を増やして同時通信が可能な端末数を増やします。これを「小ゾーン」方式といいます。FDMAでは、セル内に収容する端末の数は割り当てられたチャンネル数で決まるため、一定範囲内にあるセル数を増やすことで、全体として収容できる端末の数を増やせるからです。

 さらにアンテナに指向性を持たせ、セルを複数に分割する手法を使うことで、やはり同時通信が可能な端末数を増やすことが可能です(図)。セルを分割することをセクタ構成といい、分割された領域をセクタと呼びます。この方法は、基地局を増やす必要がないため、小ゾーン方式よりもコスト的に有利になります。

1つのセクタを指向性のあるアンテナを使い、複数に分割することをセクタ化といい、分割された領域をセクタと呼ぶ。アンテナに指向性があるので別のセクタからの電波を受信しなくなり、同じチャンネルを同時に利用できるようになる

 なお、小ゾーンとセクタ構成の両方を使う場合もあります。小ゾーンを使う場合には、基地局の出力や放射パターンなどを調整して遠くまで電波が伝わらないようにするなどの調整が必要になります。このため、アンテナに指向性を持たせる必要が出てきます。

 ビルの屋上にある携帯電話のアンテナなどを見ると、複数の垂直な棒が立っていることがあります。これがアンテナです。複数あるのは、それぞれに指向性があるからです。実際には、セル内に人が多く集まる場所などがあるときには、指向性を調整して、その方角により多くの端末を収容できるように調整します。

 CDMA方式の場合、同一の周波数を使うため、周波数をクラスタに分割する必要はありません。しかし、ある1つの端末と基地局間の通信から見ると、他の端末が行う通信はすべてノイズとなり、端末数が増えるとノイズが大きくなりすぎて、通信が困難になります。1つの基地局が同時に行える通信の数に上限があることは、FDMAと同じです。また、電波は、距離に応じて減衰するため、やはり1つの基地局と通信可能な距離にも限界があります(こちらは、送信出力などに影響されます)。

 このため、やはりセルを作り、一定範囲内にある一定数の端末を収容します。CDMAでもセクタ化は有効で、指向性のあるアンテナを使うことにより、基地局側でほかの通信からの影響を少なくすることが可能です。

 CDMAの場合、セル内に収容する端末数の上限は、いくつかの方法で改善することができるため、結果的には同一帯域を使うFDMAよりも1セル内で同時通信が可能な端末数を増やすことができます。たとえば音声などの通信を圧縮し、間欠的に送信するようにすれば、お互いの干渉を小さくできます。また基地局からの距離に応じて最低限必要な出力に下げるような制御(パワーコントロール)を行うことで、やはりお互いの影響を避けることができます。こうした制御によって、回路は複雑になりますが、結果的に1つのセルの収容数を大きくできます。

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