一連の複雑な事象やプロセスを取り上げ、理解や反復、応用のしやすい形で表すには、それなりの手法が必要になる。緻密さと単純さを統合してくれるものだ。ただし、あまりに緻密なものは敬遠され、逆に単純すぎても意味がない。実際、取引先開拓手法の多くは完ぺきさを求めるあまり、導入や応用の容易さを二の次にしがちだ。そういうものは非常に優れてはいてもめったに利用されず、期待したほど助けにならない。
本書で紹介するORDERモデルは、取引先を開拓する方法を高度な専門知識レベルで一般化したものである。このモデルの本質、すなわちその基本的内容は、グローバル経済全体に共通する。ただし、その応用の仕方は、国、文化、都市、業種、ソリューション、人格などによってかなり異なる。
このORDERモデルについて、まずは全体像と主要要素についてざっと説明する。そのあと、各要素を詳しく見ていこう。
ニーズやウォンツの存在を認識していない相手の成功を手助けすることはできない。苦労なくして得るものはなく、問題や得たい結果がなければ取引機会もない。次の点について検討すると、ニーズについてお互いに理解を深めることができる。
大きなニーズや機会が存在したとしても、「資源」に事欠くようでは成功の手助けはできない。次の点に関する検討が必要になる。
大きなニーズや機会が存在し、利用できる「資源」も十分あったとしても、意思決定をする能力や意志のない者の成功を手助けすることはできない。相手の意思決定のプロセスを理解し、それに働きかけるためには、次の点をクライアントと一緒に考えるとよい。
クライアントの置かれた状況を考えたとき、我々のソリューションを勧める根拠は何か。
クライアントはプレゼンテーションを聴き終えると、「採用」「不採用」「保留」のいずれかの意思表示をすることになる。どの判断であっても、それぞれについて前向きで生産的な関係を継続させるのに有効な言い方がある。
ORDERは直線的に表してあるが、実際は反復的に応用される。ORDの段階での情報は多くの対話を通じて得られる場合が多く、ジグソーパズルを少しずつ完成させていくような作業になる。ERに入る前にORDの段階を経るのが自然だが、ERの要素がORDの話に入ってくることもある。
ORDを適切に行っておくと、ERでの成功の確率がそれだけ高くなる。「ニーズや機会」が具体化されず、「資源」の確保も不十分なうえ、クライアントの意思決定プロセスが曖昧で、必要な人たちとの面会も許してもらえないような状況では、お互いにソリューションどころではないのだ。
ORDで必要とされるいくつかの能力、スキル、メンタル・モデルは、ERのものと異なる。
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