取引を成約に結び付ける“ORDER”モデルとは売れるコンサルティング・セールスへの5つの道(2/3 ページ)

» 2009年06月30日 16時52分 公開
[マハン・カルサー, ランディ・イリッグ, (訳)フランクリン・コヴィー・ジャパン,Business Media 誠]

ORDERモデル

 一連の複雑な事象やプロセスを取り上げ、理解や反復、応用のしやすい形で表すには、それなりの手法が必要になる。緻密さと単純さを統合してくれるものだ。ただし、あまりに緻密なものは敬遠され、逆に単純すぎても意味がない。実際、取引先開拓手法の多くは完ぺきさを求めるあまり、導入や応用の容易さを二の次にしがちだ。そういうものは非常に優れてはいてもめったに利用されず、期待したほど助けにならない。

 本書で紹介するORDERモデルは、取引先を開拓する方法を高度な専門知識レベルで一般化したものである。このモデルの本質、すなわちその基本的内容は、グローバル経済全体に共通する。ただし、その応用の仕方は、国、文化、都市、業種、ソリューション、人格などによってかなり異なる。

 このORDERモデルについて、まずは全体像と主要要素についてざっと説明する。そのあと、各要素を詳しく見ていこう。

ニーズの発掘:実行の必要性があるか

 ニーズやウォンツの存在を認識していない相手の成功を手助けすることはできない。苦労なくして得るものはなく、問題や得たい結果がなければ取引機会もない。次の点について検討すると、ニーズについてお互いに理解を深めることができる。

  • 課題:クライアントはどんな問題あるいは成果に取り組もうとしているか。その際の優先順位は。
  • 証拠:我々はその問題をどう定義し、成功をどうやって測定するか。
  • インパクト:金銭面および無形のメリットやデメリットは何か。
  • 背景:この課題やソリューションの影響はほかにも及ぶか。
  • 障害:この組織が過去または将来においてこれらの問題を解決できない原因は何か。

資源:実行に要する手段はそろっているか

 大きなニーズや機会が存在したとしても、「資源」に事欠くようでは成功の手助けはできない。次の点に関する検討が必要になる。

  • 時間:相手はいつまでに結果を出したいと思っているか。
  • 人材:どんな人材を投入するつもりか。
  • 資金:求める結果を達成するには、どの程度の投資が適当か。

意思決定:決定は誰が、どのように行うか

 大きなニーズや機会が存在し、利用できる「資源」も十分あったとしても、意思決定をする能力や意志のない者の成功を手助けすることはできない。相手の意思決定のプロセスを理解し、それに働きかけるためには、次の点をクライアントと一緒に考えるとよい。

的確なソリューション(意思決定を促す):クライアントは我々と取引する意志があるか

  • 我々のソリューションは何か。

 クライアントの置かれた状況を考えたとき、我々のソリューションを勧める根拠は何か。

  • 我々のソリューションのメリットをアピールし、好ましい決定を促すにはどうしたらよいか。

結果:クライアントは我々ともっと取引する意志があるか。

 クライアントはプレゼンテーションを聴き終えると、「採用」「不採用」「保留」のいずれかの意思表示をすることになる。どの判断であっても、それぞれについて前向きで生産的な関係を継続させるのに有効な言い方がある。

  • 「採用」の場合:求める結果の達成・評価はどのように行いますか。価値に基づくお互いの関係をどのように築き、展開させていきましょうか。

  • 「不採用」の場合:今後のためにお教えいただけたらありがたいのですが、御社のニーズを満たすうえで、弊社のソリューションは他社と比較してどんな点が劣っていたでしょうか。「保留」の場合:採用であれ不採用であれ、どうしたら御社の具体的な意志を明確にしていただけるでしょうか。

 ORDERは直線的に表してあるが、実際は反復的に応用される。ORDの段階での情報は多くの対話を通じて得られる場合が多く、ジグソーパズルを少しずつ完成させていくような作業になる。ERに入る前にORDの段階を経るのが自然だが、ERの要素がORDの話に入ってくることもある。

 ORDを適切に行っておくと、ERでの成功の確率がそれだけ高くなる。「ニーズや機会」が具体化されず、「資源」の確保も不十分なうえ、クライアントの意思決定プロセスが曖昧で、必要な人たちとの面会も許してもらえないような状況では、お互いにソリューションどころではないのだ。

 ORDで必要とされるいくつかの能力、スキル、メンタル・モデルは、ERのものと異なる。

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