マインドとテクニックで学ぶ――結婚式で感動的なスピーチを行うトーク術人を動かす話し方講座(3/3 ページ)

» 2009年04月20日 11時45分 公開
[水野浩志,Business Media 誠]
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テクニック:人の成長を語るための3つのプロセス

 ご両親ほどではないにしろ、相手が成長していくプロセスを語るには、具体的にどうしたらいいでしょうか。それは、

 成長を表現する3つのプロセスを話に盛り込む


 ことが必要になります。その3つのプロセスとは、

  1. 成長する前の状態
  2. 成長したきっかけ
  3. 成長した後の状態

 というものです。この3つのプロセスを時間軸に沿って語ることにより、聞き手は成長をリアルに感じることができるんですね。

 さらにいうならばこの成長前と成長後のギャップが大きければ大きいほど、感動のインパクトは大きくなります。だから成長前の話は、かなりダメっぷりの大きい方が聞き手に与える影響も大きいでしょう。

 ちなみに、私の結婚式で昔話を暴露した神父さまも、この時間軸の流れに沿って話をしてくれました。

  1. 小さいころのやんちゃ時代の話(成長する前の状態)
  2. 30年ご無沙汰していたという話(成長のきっかけ)
  3. 立派な大人となって現れ、どんなに真剣な想いでこの結婚を決意したのかを語った話(成長した後の状態)

 このように、昔の自分や再会した後で私の思いをきちんと受け止めてくれたときの話を巧みに織り交ぜながら、私の人間としての成長を参列者に分かりやすく伝えてくれたんですね。

 なんかもう私、そのときの話を聞いて、目頭がジーンと熱くなって、本当にうれしいなあと思いました。きっと参列者も格好悪い昔の私の姿を聞きながら、少なくとも悪い奴と結婚をしたわけではないなと感じてくれたことと思います。

 とはいえこれは、あくまでも私が昔からお世話になった神父さまであり、なおかつ、その人が結婚式の祝福の役目を務めてくれたからこそ成立したとも言えるでしょう。

 あくまでもここで行うスピーチとは、一世一代の結婚式場であるということを忘れてはいけません。式の雰囲気や参列者のメンバーによっては、あまりにリアルなダメっぷりを披露すると、会場の雰囲気を思いっきり破壊しかねません。では、どうしたらいいか。対策は3つあります。

  1. すでにばらされても影響がないような過去の話をする
  2. 新郎新婦に対しての印象が、いい方向に大きく変わったきっかけ話をする
  3. 新郎新婦によって自分が成長できた時の話をする

 特に3番目。これは自分より立場が上の人へのスピーチを行うに当たっては有効な方法でしょう。下の立場の人間が、上の人の成長を語るというのは、生意気に受け止められてしまいますからね。ですから、自分が成長した話をした上で、その感謝の気持ちを2人の門出に伝えるのはスピーチとしても素敵なものになるでしょう。

 繰り返しになりますが、結婚とは新郎新婦の成長の証と、新しい旅立ちを祝うためのものです。その成長のステージを祝うスピーチをするならば、ぜひ新郎新婦が、またはその2人に関わった自分自身が素敵に成長していった姿をきちんと語ってあげてほしいと思うのです。

 そして、その成長の後に迎えた今日のこの結婚を心から喜び、そして祝う気持ちを伝えてみましょう。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップやモチベーション創造、自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や講師としてのマインド、人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


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