役に立たない企業理念で部下をきちんと指導するには部下をやる気にさせて育てる指導術(3/3 ページ)

» 2008年10月14日 13時10分 公開
[水野浩志,ITmedia]
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不二家に学ぶ、あいまいなものを具体的に表現する方法とは

 あいまいなものを具体的にする、という方法としてよく取られる方法に「数値で表現する」というものがあります。これは目標設定などによく用いられ、それはそれで具体的な表現ができるようになります。

 しかし企業理念には、数値では表せないものや、そもそも数値で表現するものではない要素も含まれています。そんなモヤっとしたものを具体的に表現するための方法の1つに、「皆が具体的に共有できるイメージを使う」という方法があります。

 例えば、洋菓子メーカーの不二家です。2007年に消費期限切れの食材を使用していたことが発覚し、大きな問題となりました。その後、衛生上の問題も見つかり、洋菓子の製造販売を中止。以来3カ月近くも商品が出荷できない状態が続いたことがあります。

 その後不二家は、経営の立て直しのため、企業理念も見直すこととなりました。それまでの不二家は社是として、

  • 愛と誠心(まごころ)と感謝をこめて、お客様に愛される不二家になりましょう。

 という言葉を掲げていました。しかし事件を契機に、

  • 愛と誠心(まごころ)と感謝をこめて、お客様に愛される不二家になります

 と、前向きで行動的な表現に変え、さらに新たにビジョンを立てました。それは

  • 団らんの場で家族をつなぐ良質なお菓子を提供する会社になります
  • 「すべてをおかあさんの気持ちで!」

 という言葉。このように、自社の商品が使われている状況を具体的にイメージできるよう、「団らんの場」というシチュエーションを表現したり、体にいい、安全な商品作りをする心構えを「お母さんの気持ちで」という言葉で表現するなど、あいまいでつかみ所のなかった社是に、ひとつの具体的なイメージを持たせることに成功したのです。

 これほど具体的なイメージが描けるようになっていれば、期限切れ食材を使ったり、体に良くない食材を使うといった判断も防げるはずです。少なくとも企業理念を元に仕事を指導している限り。

 本来、企業理念を分かりやすく表現するということは、企業のトップが行うべきことです。しかし、実際にトップを動かすことはすぐには無理だということがほとんど。であるなら、自分なりに企業理念を咀嚼(そしゃく)し、具体的でリアルに実感できるような表現に変えてみるといいでしょう。

 そして部下に指導する際は、その企業理念を常に携えながら、その理念実現に向かうような指導をしていくことを、常に心がけて見てください。それが、軸足がぶれずに部下指導を行う、重要なポイントとなるのですから。

著者紹介 水野浩志(みずの・ひろし)

 マイルストーン代表取締役。「社会に活き活きと働く大人たちを生み出す」をスローガンに掲げ、リーダーシップ・モチベーション創造・自己表現力養成をテーマにした企業研修や公開セミナーを実施。また、研修・セミナー講師向けに、具体的な成果を生み出す効果的なカリキュラムの構築手法や、講師としてのマインド・人間力創りの指導も行っている。現在、日刊(平日)で、メールマガジン「1回3分でレベルアップ! 相手の心を掴むトーク術」を発行中。


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