企業帝国の弱点とは? そこで働く人たちの悲哀小飼弾×松井博、どこへ行く? 帝国化していく企業(2)(2/5 ページ)

» 2013年06月21日 00時00分 公開
[野本響子,Business Media 誠]

米国の中にも“国境”がある

――本社があるところに、税金を払うべきではないのでしょうか?

松井博さん

松井:本社はあくまで登記簿上のことですからね。例えば、米国に「アクセンチュア」というコンサルティングファームがあるのですが、ここは本社を何度も移してるんです。

 最初はシカゴに本社があったので、社員は「オレは本社が米国にある企業に入ったんだ」って思うじゃないですか。だけど気が付いたら本社がバミューダ諸島かなんかに移ってて、「あれ、オレの会社はバミューダ諸島の会社だったのか」ということになる(現在の本社はアイルランドにある)。本社なんか都合のいいところに移してしまうんです。

 アップルの本社はいまのところ、カリフォルニア州にあります。ただ、もうかったお金はネバダ州で投資に回しているんですよ。というのもネバダ州は州税ゼロなので……。こうしたことをしているのはアップルだけではなく、たくさんの企業が同じようなことをしているんですよね。

小飼:米国の中にも“国境”があって、それをうまく利用してるんですよね。私たちが知っている会社の多くの本社は、デラウェア州ですから。

松井:いまはそういうことを、地球規模でやっています。だから国家が雇用を発生させたかったら、法人税を下げざるを得ない。では、企業が本来どこに税金払うべきかというと、よく分からない。

小飼:ほとんどの人が働いている中国なのか、それとも、本社がある米国か、登記簿上の本社があるアイルランドか。実は国家同士が足の引っ張り合いをやってるんですね。

松井:国が地方自治体化しているんですよ。以前、地方自治体が「ウチに来てくれたら工業団地つくります」とか「税金下げますよ」などとやっていますね。いまはルクセンブルクやアイルランド、シンガポールなどが企業に対して同様のことをしています。

小飼:「地方自治体化」……すごく適切な表現ですね。これを止めるやり方は、あることはあるんです。ただ、僕は弊害のほうが大きいかなと。つまり「全世界統一帝国」をつくるしかない。どんな国にいこうが、税金から逃れられないようにするんです。

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