乗客の搭乗が始まった。ソウル発9時10分のこの便は、通常「KE701」という便名で運航されている。しかしこの日に限っては、A380の就航を記念して「KE380」の便名が付けられた。就航初便という貴重なフライトを体験しようと、乗客の多くが早い時期にチケットを予約し、この日を心待ちにしていたようだ。
旅客機への搭乗はふつう、上級クラスの乗客から優先的に案内されるが、最近はヨーロッパなどの空港で“逆転現象”が起こり始めている。上級クラスが後回しにされ、エコノミーの乗客を優先する──という搭乗スタイルだ。理由は、上級クラスの乗客から「先にシートに座らされてほかの乗客が乗ってくるのを待つより、時間ぎりぎりまでラウンジでのんびりしていたい」という声が増えたこと。上級クラスでは機内でシャンパンなどのウェルカムドリンクがサービスされるが、いまは空港ラウンジが充実し、シャンパンどころかビールもワインも置いてある。出発までラウンジでくつろぎたいというのは当然の要望かもしれない。
とくにオール2階建て機であるエアバスA380は乗客数が多いため、運航するエアラインは、搭乗開始を出発予定時刻の50分くらい前に設定しているケースが少なくない。そのぶん、先に乗った人はいままで以上に長い時間、機内で待たされることになる。
大韓航空でも、KE380便に関してはやはり搭乗開始時間を早めるのか? そう思っていたら、仁川国際空港での搭乗開始は通常便と同じ出発のきっちり30分前という設定だった。それで出発が遅れることもなく、搭乗はじつにスムーズ。A380を運航する各社のキャビン設計が500席前後であるのに対し、大韓航空は407席と100席ほど少ないことももちろん理由の1つだ。しかしもっと大きな秘密が、同空港の搭乗ゲートに隠されていた。
仁川国際空港の指定された「10番ゲート」を抜けると、そこから3本のボーディングブリッジがするするっと機体のドアに伸びている。1本目はメインデッキ前方のファーストクラスキャビンのドアへ、もう1本はその後方のエコノミークラスのドアへ、そして残る1本はアッパーデッキにあるビジネスクラスのドアへ。つまり、それぞれのクラスに乗客がダイレクトに入れるようにしたのだ。
そうすることで、通路での人の渋滞も解消。広いキャビンで通路もゆったりとってあるため、頭上のラックに荷物を入れ込む乗客の横を、あとから来た乗客が通り抜けていく。搭乗開始後、間もなくドアがクローズされ、A380の就航初便はトーイングカーにプッシュバックされて予定の時間にゲートを離れていった。
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