地方鉄道活性化に「旅ラン」のご提案:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
地方鉄道にとって、観光誘客は重要だ。最近の流行は内装にこだわり、食事を提供する観光列車だ。鉄道ファン向けの運転体験イベントなどもある。もっと欲張って、異分野からの誘客を考えてみたい。今回はマラソンの世界を学び、地方鉄道との親和性を探った。
マラソン趣味人口は500万人超
2007年に「東京マラソン」が開始してから東京メトロは特別協賛している。首都・東京の道路を通行止めにしてまで実施される東京マラソンは、構想時から国内外の注目を集めた。「トーキョーに来たらぜひメトロに乗ってください」というわけで、東京メトロを世界へアピールする良い機会だ。広告効果だけではなく実利もある。自動車やバスの通行が制限されるから地下鉄の乗客が増える。東京メトロはマラソン観戦者用に「ゆりかもめ&メトロパス」を期間限定の割引料金で販売していた。
市民マラソン大会に鉄道会社が協賛する例はほかにもある。神奈川県の「三浦国際市民マラソン」は京急電鉄グループ、三重県の「志摩ロードパーティ ハーフマラソン」は実行委員会に近畿日本鉄道が参加している。埼玉県の「熊谷さくらマラソン大会」は、協力会社として秩父鉄道とJR東日本が表記されていた。地域活性化のイベントだから、その地域の鉄道会社もかかわる。内容は協賛(資金提供)から踏切の交通整理、会場最寄り駅に急行列車が臨時停車などさまざまだ。
マラソン大会などスポーツのタイム計測事業を手掛ける「計測工房」によると、国内で参加人数5000人以上の市民マラソンは年間170回以上も開催されている。1万人以上に絞り込むと64大会。最多参加人数は東京マラソンで3万5797人。2位が大阪マラソンの3万1981人、3位がNAHAマラソンで2万9568人、4位はかすみがうらマラソンで2万7581人。以下、湘南、横浜、勝田と続く。
日常的にランニングを楽しむ人も多い。笹川スポーツ財団が公開する「スポーツライフ・データ」によると、成人のジョギング/ランニングの年1回以上の実施者は推計で986万人。週1回以上では550万人だ。実施率は2006年ごろから上昇傾向だ。2007年スタートの東京マラソンによって、ランニング趣味人口が広がったと言えそうだ。
鉄道趣味人口は、2005年に野村総研がマニア層で2万人と発表しており、2010年に「少しでも好き」を含めるとその100倍、200万人規模とコメントしていた(関連リンク)。ランニング趣味人口はその2倍以上になる。地方鉄道は鉄道ファンや鉄道旅行客の取り込みに注力しているけれど、ランニング趣味という異分野からの集客も考えてよさそうだ。
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